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2022年度 新入社員意識調査から紐解く、就職活動の実態と今時の若者の特徴

 

東京商工会議所は、2022年度新入社員研修の受講者を対象に新入社員の意識調査を実施しました。
今回の意識調査結果をもとに、コロナ禍2年目で就職活動本番を迎えた新入社員の実態と、そこから見えてくる新入社員・今時の若者の特徴についてまとめます。

 

■就職活動の「順調さ」はコロナ禍以前の水準まで回復
■就職活動オンラインスタンダード化の実態と影響
■偶然の出会いが少ない就活生の悩み
■「自己成長」と「働き方」への志向は引き続き底流
■いかに自分とは違う価値観に触れる機会を演出するか

※文中における「本調査」とは、東京商工会議所が実施した「2022年度 新入社員意識調査」を指します。

 

■就職活動の「順調さ」はコロナ禍以前の水準まで回復

コロナ禍の影響により昨年度調査で減少に転じた就職活動の「順調さ」は回復。
1社目内定取得時期の早期化やオンラインスタンダード化が影響した。

 

図1.就職活動の感想 (2017~2022年度)

 

図2.大学文理別 就職活動の感想 (2017~2022年度)

 

「順調だった」、「ほぼ順調だった」と回答した割合の合計は、58.4%でした。2021年度より8.5ポイント増加し、2018年度(55.9%)、2019年度(58.8%)の水準に戻っています。文理別でみても同様の傾向でした。

図3.平均内定企業数(大学卒) (2017~2022年度)

 

大学卒の平均内定企業数についても、図1.2と同様の傾向でした。文理ともに2021年度は下がったものの、今年度は増加に転じ、以前の水準まで回復。また、文系よりも理系の方が、増加幅が大きくなっています。

コロナ禍の影響を大きく受けた昨年度(2021年度)を経て、就活生目線で見た就職活動の「順調さ」は、本調査(図1、図2)を見ると、コロナ禍以前の水準まで回復しました。

大卒求人倍率(大学院卒含む)を整理すると、2017年3月卒:1.74倍、2018年3月卒:1.78倍、2019年3月卒:1.88倍、2020年3月卒:1.83倍、2021年3月卒:1.53倍、2022年3月卒1.50倍で推移しており(※1)、2022年卒はコロナ禍の影響で下がった2021年卒と同等値で下げ止まっています。本調査の「平均内定企業数」(図3)についても今年度は昨年度から回復していることなどにも鑑みれば、需要と供給のバランスという意味での「内定取得のしやすさ」は改善したと考えることができます。

別の観点として、2021年卒と2022年卒の大学生における就職内定率(1社でも内定を取得している学生の割合)に注目すると、5月以降は2022年卒の方が一貫して高い数値で推移しています(※2)。2022年卒の大学生は想定以上に早いタイミングで1社目の内定が出ており、内定が取れずに苦しい時期が2021年卒の大学生と比べて相対的に短かったことが「順調さ」に影響を与えていたと考えることができます。さらに、コロナ禍1年目に就職活動を実施した2021年卒の大学生と比べて、就職活動のオンラインスタンダード化が進んでいたことも大きな要因であると筆者は考えています。以下、その実態と影響について整理します。

※1)リクルート リクルートワークス研究所 「第38回 ワークス大卒求人倍率調査(2022年卒)」
※2)リクルート 就職みらい研究所「就職プロセス調査(2023年卒)『2022年6月1日時点 内定状況』」

 

■就職活動オンラインスタンダード化の実態と影響

就職活動に割く時間が創出しやすくなり、交通費など費用面の障壁が低くなった結果、2022年卒の学生の受験社数は2021年卒に引き続き増加。一方で、「働く自分をイメージする」ことに関する企業情報は得にくくなっている。

 

図4.就職活動で苦労したこと

 

本調査の「就職活動で苦労したこと」(図4)を見ると、「説明会や面接日程・時間の調整」は、昨年度は急増しましたが、今年度は以前よりも低い水準まで大幅に減少しています。「予想以上に費用がかかった」については、昨年度は大幅に減少しましたが、今年度はさらに減少しています。一方で、「自分のやりたいことがわからず悩んだ」や「会社について知りたい情報が入手しにくかった」と回答した割合が増加しています。

 

図5.社会人生活で不安に感じること

 

本調査の「社会人生活で不安に感じること」(図5)を見ると、「仕事と私生活のバランスが取れるか」が55.4%で最上位でした。その他「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」、「仕事が自分に合っているか」も同水準で上位となっています。この上位3項目は、昨年度の本調査の結果と同項目でした。

 

◇就職活動の期間は前倒しによって長期化している

卒:7.6カ月(平均)と、2022年卒の学生は2021年卒の学生に引き続き長期化傾向です。(※3)

その要因としては、まず、就職活動の開始時期が卒業年次前年の9月迄の学生の割合は、20年卒:30.3%、21年卒:44.6%、22年卒:44.0%と推移しており、インターンシップが盛んな時期(3年生の夏)に就職活動を開始する学生の割合が増えていると考えられます。
(※4)

一方で、入社(予定)企業からの内定取得時期は、就職活動の開始時期の早い遅いに関わらず卒業年次の6月にピークを迎えています。(※5)

これらのことから、就職活動の早期化によって活動期間が長期化しているということができます。

 

◇オンラインコミュニケーションが浸透

今年度の新入社員(大学卒)は、3年生になった直後の4月に初の緊急事態宣言が発令された年代です。3年生夏のインターンシップが盛んな時期にはコロナ禍の影響が出ており、その後の就職活動本番時期には、オンライン対応が進んでいたと考えられます。

実際に、2021年卒の学生では、オンラインでの企業説明会・セミナーに参加したことのある学生は全体の75.6%、面接が80.6%でしたが、2022年卒の学生はそれぞれ90%超になっています(※6)。

また、本調査の「就職活動で苦労したこと」(図4)の結果についても、昨年度の本調査では「その他」の内容はオンライン対応に関するものが多い状況でしたが、今年度の本調査ではそのような内容はほとんどありませんでした。

これらのことから、今年度の新入社員は就職活動本番開始時からコロナ禍に晒されており、オンラインスタンダードの中で就職活動していたという様相を見てとることができます。

 

◇受験社数が増加

一人あたりの平均選考受験(エントリーシートなどの提出)社数は、2020年卒:12.36社、2021年卒:14.75社、2022年卒:17.33社と増加し続けています。(※7)

受験者数が増加したことに関しては、先述の通り、就職活動の長期化により企業と接する期間が延びたほか、
・オンライン化により移動時間がなくなり、企業との接点に割ける時間が増えた
・アルバイトや遊びなども制限され、就職活動に使うことができる時間が増えた
・オンデマンド(録画)型セミナーなどで、説明会に参加できる時間帯も一部で分散した
など、就職活動に使うことができる時間が増えたことが要因だと考えられます。
また同時に、交通費など費用面での負担が減ったほか、
・コロナ禍が続き、オンライン対応が進んでいたことで、通信環境や機材などの設備が整った状態で就職活動の本番時期を迎えられた
・特に企業説明会では参加人数の上限がなくなり希望日時の説明会に参加できる確率が上がった
など、説明会や選考への参加障壁が下がったことも寄与していると考えられます。

 

◇ 知りたい情報の入手ができなかった

図6.オンラインによる就職活動でよかったこと

本調査 の「就職活動で苦労したこと」(図4)を見ると、「会社について知りたい情報が入手しにくかった」との回答が昨年度と比べて若干増加しています。また、本調査の「オンラインによる就職活動でよかったこと」(図6)を見ると、「会社について知りたい情報が入手しやすかった」、「企業の担当者へ質問がしやすかった」との回答が少なかったことから、オンラインスタンダードの就職活動において、就活生は知りたい情報の入手が十分にできていなかったと考えられます。ここでは、その中身について紐解いていきます。

2022年卒の学生へのアンケート(※8)では、就職活動で「知りたいと思っていたが知ることができなかったこと」で差が大きい上位5項目は、順に「社内の人間関係」、「採用選考の基準」、「所定外労働時間(残業など)の実績」、「具体的な仕事内容」、「社風・企業文化」となっており、各項目の差は2021年卒の学生よりも大きくなっています。

この中で、人間関係や社風・企業文化などの定性情報や、残業や具体的な仕事内容などの働く自分のイメージにまつわる情報については、本調査の図5.「社会人生活で不安に感じること」の上位3項目「仕事と私生活とのバランスが取れるか」、「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」、「仕事が自分に合っているか」とも連動しており、就職活動の時期のみならず内定状態の時期や入社時期に至るまで、このような新入社員の不安は払しょくできていないということを示唆しています。
 
ただその上で、「社内の人間関係」、「所定外労働時間(残業など)の実績」、「具体的な仕事内容」、「社風・企業文化」といった項目については企業も積極的に伝えようとしている状況に鑑みると、オンラインスタンダードの状況下で「働く自分をイメージできるか」といったことにまつわる情報提供・情報交換に関しては、以前にも増して企業・学生双方の間に壁ができてしまったのではないかと筆者は考えています。

※3)~※8)リクルート 就職みらい研究所「就職白書」



■偶然の出会いが少ない就活生の悩み

「偶然の出会い」や「体験による気づきの機会」が失われたことで、
「自分がやりたいこと」を醸成しにくくなっている。

本調査の「就職活動で苦労したこと」(図4)を見ると、最も多かった回答は、昨年度に引き続き「自分のやりたいことが分からず悩んだ」でした。このことが何を意味しているかを理解するため、就活生を取り巻く環境を整理してみます。

・学業においてもオンラインスタンダード
例えば、大学生・大学院生におけるオンライン授業の受講状況は、内閣府が2020年5月~6月に実施した調査では、「通常通りの授業をオンラインで受講した」、「一部の授業をオンラインで受講した」を合わせると、95.4%、12月に実施した調査では87.7%と、多くの学生がオンラインで授業を受講していました。(※9)

・外出自粛により、アルバイトやサークルなどの活動にも制限
例えば、独立行政法人日本学生支援機構が2020年度に実施した調査では、アルバイトに従事する大学生(昼間部)の割合は80.7%で、2018年度に実施した調査と比べて5.4ポイント減少しました。(※10)

・スマホ、SNSネイティブ世代特有のコミュニケーション
スマホ・SNSなど、今時の学生のコミュニケーションツールに鑑みると、「自分の頭の中にある」キーワードの検索による情報収集や、「自分の志向に合致した」レコメンドでの情報摂取、「居心地のいいコミュニティ」に居続けられること、が当たり前になっています。


このような背景から、2022年度の新入社員は特に、自分と異なる価値観に触れる機会が少なく、今の自分の価値観のまま居続ける傾向が強いと考えられます。
コロナ禍により、予期せぬ偶然の出会い、体験による気づきや学びの機会が失われ、新しい価値観を醸成したり、他者比較の中での自己を客観視する機会が極端に減ったことで「自分を知る」ことが難しかったのではないかと筆者は考えています。
――――
以上のことを俯瞰した時に、2022年度の新入社員はオンラインスタンダード化により、受験社数が増えるなど多くの企業情報が入手できるようになった一方で、オンライン特有の情報の非対称性を感じながら、入社先の企業を適切に選択するために必要な自己理解が十分に促進されていないという就職活動の事情が浮き彫りになってきます。

※9)内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」
※10)独立行政法人日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査結果」

 

 

■「自己成長」と「働き方」への志向は引き続き底流

「会社依存ではいけない」という意味での「自己成長」への意欲と、
「会社以外のコミュニティに使うことのできる時間」を気にする傾向は、
短期的でなく中長期的な特徴。

 

図7.今の会社でいつまで働きたいか

 

昨年度の本調査で増加に転じた「定年まで」は、今年度は以前の水準まで減少しました。10年前の2012年度との比較では、「定年まで」は12.4ポイント減少し、「チャンスがあれば転職」、「将来は独立」と回答した割合の合計は7.2ポイント増加しています。

図8.就職する会社を選ぶ上で魅力に感じる企業の制度

「年次有給休暇取得の推進」、「時差出勤・フレックスタイム制勤務」、「テレワーク(在宅勤務)」など、働き方に関する選択肢と、「資格(検定)等の取得支援」、「人材育成体系(研修)の充実」など、入社してからの成長やスキルアップについての選択肢が上位となりました。

本調査の「今の会社でいつまで働きたいか」(図7)を見ると、昨年度は「定年まで」が増加し、コロナ禍の影響により一時的に安定を求める傾向が強くなりましたが、今年度は「定年まで」の割合が以前の水準まで減少しました。これらのデータを中長期的に見れば、今時の若者や新入社員にとって「安定」の意味が「今の事業が安定している企業や団体に所属すること」から「所属する企業や団体に関係のない、自身の市場価値を高めること」へと変化しつつあることを示していると筆者は考えています。(※11)

本調査の「就職する会社を選ぶ上で魅力に感じる企業の制度」(図8)は昨年度と同様に、「働き方」と「自身の成長環境」に関する項目が上位を占めました。

「成長環境」の項目については、先ほど記載した通りの意味で、今どきの若者や新入社員に底流する「自己成長」の意識の表れであると理解することができます。また、「働き方」に関する項目については、複数のコミュニティに所属することが普通であり、会社がメインコミュニティとは言い切れない若手社員にとって「どのくらい自分の裁量が効く時間があるのか」ということに興味が出ていることによると筆者は捉えています。(※11)

上記の通り、特に昨年度の本調査では、コロナ禍の影響が一部見られたものの、中長期的に考えれば、「会社に依存しない市場価値をつけなければいけない」という価値観の下で、「限られた時間リソースを就職先の企業にどのくらい割く必要があるのか」ということを慎重に見極めているという若者の志向は、引き続き底流しているといえるでしょう。

※11)新入社員意識調査から紐解く、コロナ禍就活の実態と若手社員の特徴 ~
「成長したいのに時間は気にする」若者は何を考えているか
(東京商工会議所 2021年度新入社員意識調査関連コラム)

 

 

■いかに自分とは違う価値観に触れる機会を演出するか
自分とは異なる価値観や考え方にぶつかる経験をつくり出せるか、が鍵。

これまで、今時の若者に底流する志向を確認しつつも、移行期を経てオンラインスタンダード化された就職活動(または学校生活)により、2022年度の新入社員については、異なる価値観に触れる機会が少なく、今までの価値観のまま居続ける傾向が強くなっていることを述べてきました。

このような背景の下、若手社員の育成については、単に「オンラインに慣れている」ということだけではなく、自分の価値観と異なる他者とのやりとりが少なく、自分の世界を広げる出会いの価値が上がっているという点を踏まえて、特徴を捉えた計画を練ることが大切です。

例えば、
・是とも非ともいえる議題について、建設的に意見を交わし合うミーティングの実施
・自身の意見を表明できる心理的安全性が担保されている上司とのコミュニケーションの促進
・自社内に閉じていない集合型、かつワーク中心の研修 
など、「異なる価値観の他者とのやりとり」を促進する施策や取組がより一層求められるのではないかと筆者は考えています。

 

<この記事に関連するサイト>
「自ら考え動く」チームづくり講座
https://myevent.tokyo-cci.or.jp/tile.php?searching_name=E12&entry_status2=2

※本コラムを執筆いただいた高野先生によるオンライン研修講座です。

 

高野氏の昨年度のコラムはこちら