東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞 で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。
真に理財に長ずる人は、
よく集むると同時によく散ずるようでなくてはならぬ【論語と算盤】:能く集め能く散ぜよ より
大河ドラマ『青天を衝(つ)け』をご覧になっていますか。
私は毎週、必ず視聴していますが、特に印象に残っているのは初回に登場した幼少期の栄一です。
はつらつと無邪気に未来へ向かっている幼い姿に心が温まりました。
父の仕事に付き添い、子どもでありながらも、「商い」に必要な思考や努力を自らの身体で学んで身に付けたからこそ、明治時代を代表する実業家、渋沢栄一へと成長したのでしょう。
そういう意味でも、現在の日本において、未来を担う子どもたちにぜひ感じてほしいことがあります。
それは、「お金」についてです。
私が2008年に同志と設立したコモンズ投信は「世代を超える長期投資」を提唱しており、「こどもトラスト・セミナー」を通して、親子で「お金の使い方」について学ぶことができます。
消費や貯金などMe(自分)のためという分かりやすいお金の使い方があります。
しかし、寄付というWe(みんな)のためのお金の使い方では、一人でできないことでも大勢が想いを合わせればできるということに子どもたちは気付きます。
また、お金は交換されて社会を巡り回るため、そこに必ず「ありがとう」が存在します。
そして、その「ありがとう」の増加を応援することが、投資なのです。
実は、投資にはWeのお金の使い方の側面があることをご紹介しましょう。
今回のコロナ禍で多くの人が、Meはすごく大事だということを感じたでしょう。
まず自分が感染しない、発症しないことを考えて行動する。
でも、Weが止まってしまうと、Meは何もできなくなる。
Weという社会が健全に回っていることで、Meが行動できるのです。
Meの安心のためだけに貯蓄に執着する守銭奴が多数いる社会は、健全とは言えません。
渋沢栄一は、このような学びを日本の未来を担う子どもたちに身に付けてほしいと思っていることでしょう。
これまで長い間、ご愛読いただきありがとうございました。
(東商新聞2021年3月20日号 掲載)
<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長
<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。
シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm