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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.21

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載していた「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介してまいります。


われ一人ぐらいはいかなる事をしても、
多数の人がよくしてくれるからと思うは、
大いなる心得違いである。
誰もがそう思うときには、
国を挙げて誤謬(ごびゅう)におちいることとなる

【渋沢栄一 訓言集】より


不要不急」。新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の下で暮らした数カ月で、我々日本人にたった1つだけの学びがあったとしたら、それは何が「不要」で、何が「不急」であるのかが分かったことである、と期待しています。  

「不要」「不急」が分かるということは、逆に、何が「必要」であるか、何が「緊急」であるかというのが分かったことでもあります。
必要・緊急の判断ができるから、見えない脅威にも立ち向かうことができるのです。

わが国における同感染症対策で一番効力があったのは、PCR検査やワクチン、治療薬でもなく、「われ一人」の自律的行動の他にありません
日本の同感染症による死亡者数が、人口対比で欧米諸国と比べて60〜80倍ほど少ない理由はここにある、と言っても過言ではないと思います。  

「自粛」の本来の意味は、自分から進んで、行いや態度を改めることです。
決して、ネガティブな言葉ではありません。
「われ一人」の適切な行動が多数の人を良くして、感染被害をも抑制することができたのです。  

一方、自粛精神が乏しく「いかなる事をしても」、他がやってくれれば良いという身勝手な行動が多ければ、コロナ禍による傷跡は遥かに大きく深いものになったことでしょう。  

MEからWEへ。これが現代における渋沢栄一の精神です。
決してMEの否定ではありません。
MEという存在があるからこそ、MEの行動があるからこそ、WEへ恩恵が広まるのです。

そして、WEの存在があるからこそ、MEの豊かな暮らしがある。
MEとWEは相互に必要な存在である。
そして、その関係を維持することは緊急である。
そんなことを、私たちは、この数カ月で学んだのだと思います。 

(東商新聞2020年8月20日号 掲載)

 

口舌の利用によって福は来るものではないか。
もともろ多弁は関心せぬが、
無言もまた珍重すべきものではない。

【論語と算盤】:口は禍福の門なり より

日本では、行いが大事であり、言葉で表現しなくても理解や評価してもらえるはずという暗黙の了解があります。
「空気が読める」のは、見苦しい対立を避けることができる生活の智恵であることは確かです。  

ただ、それはある程度の同質性の土台があるからこそ活かせる特徴でありましょう。
民族的、社会的、経時的などの価値観や常識の多様性ある世界で正当に評価してもらうためには、行動はもちろんのこと、きちんと伝えるという意識を持つことも重要です。  
去る本年の2月中旬に、コロナ禍がアジアに限った問題と軽視されていたニューヨークへ出張し、UNDP(国連開発計画)が企画しているSDG Impactの運営委員会に参加しました。
少人数でしたが欧米諸国のみならず、南米、アフリカ、そしてアジアからの代表で構成され、多様性に満ちた会合でした。  

1965年に設立されたUNDPは、国連の下で開発途上国の経済や社会的発展のために、プロジェクト策定や管理を主に行っている国際機関。
主導してまとめているSDG Impactとは、SDGsに応えているファンド、債券発行および企業の基準および認証づくりのプロジェクトです。(https://sdgimpact.undp.org/

その運営委員会の討議の最中で、ちょっと気になったことがありました。
現在、日本では官民連携で多くの方々のご尽力により、SDGsへの認知度や関心、そして行動も高まっていることを肌で感じています。
しかし残念ながら、SDGsの一丁目一番地では日本の存在感が薄かったのです。
まじめにやっていても、その活動の的確な情報発信がなければ、特に海外から見えれば、「やっていない」に等しいです。  

やっていないことをやっているように見せかけることは、正しい道理ではない。
ただ、やっていることを他にきちんと伝えることは大事である
、と渋沢栄一も思っていたようです。


(東商新聞2020年10月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm