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【連載】中小企業M&A(第4回)「成功する友好的M&Aは専門家選びから(専門家の選び方)」

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医師にも専門があるように、税理士や銀行員など、すべての人が事業承継に詳しい訳ではありません。「事業承継の専門家」に相談すべきです。

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事業承継を友好的M&Aによって解決しようと考えた際、先ずは何から始めたらよいでしょうか?こんな質問をよく聞きます。会社を譲渡するのは一生に一回の方がほとんどです。「先ずは株主からの同意を得ないといけない。重要な取引先のご理解も得ないといけない。」とお考えになる方も多いようです。ですが、私はこの様にお答えしています、“会社をM&Aで譲渡するなら、事業承継の専門家にご相談ください”


M&Aで会社の譲渡を成功させるには、良いお相手と巡り合う事が重要です。

では「良いお相手」とはどのような先でしょうか。社風が合う、自社の業務を理解してくれている、雇用継続を確約し従業員も安心する、これらはどれも重要ですが、M&Aの成功には「シナジー効果(相乗効果)を発揮する相手」というのも重要な要素の一つです。2つ以上の企業がグループ化することでこれまで以上の売上・利益を達成することをシナジー効果と言います。M&Aの世界では1+1=3~4と言います。

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例えば、良い製品を作っている企業と、販売力のあるインターネット販売関連の企業がグループになったとしましょう。良い製品なら通常のお店でも売れますが、ネットで販売することによってこれまでの何倍にも売上が伸びるでしょう。

これこそが1+1=3~4になるという事です。このように収益アップにつながるM&Aが実現できたら社員の給与も上がるでしょう。このため譲渡を成功させるには、自社とシナジーがある会社はどこなのかを見極める必要があり、その見極めのために専門家を活用する事が成功への近道なのです。

 

では、どうやったら良いM&A支援機関・専門家を選べるかをご説明します。まずは中小企業庁が2020年3月に策定した「中小M&Aガイドライン」を遵守していることです(※1)。このガイドラインでは中小企業がM&Aに関する不安を払拭するために、M&Aの進め方や手数料の考え方などがまとまっており、M&A支援機関が遵守すべき基本事項も明記されています。2021年に中小企業庁はM&A支援機関の「登録制」を開始し、ここに登録している支援機関はガイドライン遵守を宣誓しています。ですが、登録機関は2,000を超えています(※2)。では更に、その中からよりよい支援機関の選び方、選定ポイントをご紹介します。


M&A支援機関・専門家の選定には下記の3点を比較検討するのが良いでしょう。

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① 提携先が多いと情報量は比例して多くなり紹介できるお相手候補が増えるからです。更に付け加えるなら提携先が多いという事はその支援機関のサービスが多くの組織に認められている、信頼されているという事にもなります。例えば、中小企業庁が全国の都道府県に設置している「事業承継・引継ぎ支援センター」(東京都内では、東京商工会議所と立川商工会議所に設置されています)や会計事務所、地域の金融機関と多く提携している支援機関がこれに当たります。

② 「複数人での取組み体制」については、譲渡企業1社に複数人の担当者が付くことを言います。”1人のコンサルタントが責任をもって最後まで “というのは聞こえが良いですが、言い換えれば良いお相手に巡り会えるかはその担当者次第です。複数人のチームで対応してもらえる支援機関の方が、社内の情報をフル活用できるので良いお相手に巡り合える確率も上がるでしょう。

③ 手数料については、各社とも報酬の計算表(レーマン方式等と表記されています)がありますが最低報酬額は必ず確認してください。計算では報酬額が500万円なのに最低報酬が2,000万円という場合もあります。最低報酬額は各社WEBサイト等に記載がない場合が多いので、まずは一度問い合わせてサービス内容(情報量・取組み体制)と報酬体系・最低報酬額を確認し、各社を比較検討してください。


まとめますと、情報量が多い提携先・ネットワークを持ち、複数人で対応する体制があり、最低報酬額が低い、これらを確認すると良い支援機関選びができるはずです。
上記以外ではインセンティブ給(歩合給)が強い支援機関にはご注意ください。インセンティブ給が一概に悪いわけではないですが、これが強い支援機関ではまとめ易いお相手とのマッチングを優先する傾向があるようです。インセンティブが強いかは会社の採用ページを見てください、その会社の方針が良くわかると思います。


中小企業の友好的M&Aは事業承継においてはメリットが多い手法です。ただし、良いお相手に巡り合うことが重要です。このためには積極的にM&Aの専門家を活用する事をお勧めします。今回ご紹介した専門家の選び方も皆様の事業承継の一助になれば幸いです。

次回は友好的M&Aの成功事例についてご紹介させて頂きます。


<関連リンク>
※1 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」を策定しましたhttps://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001.html

※2 中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録ファイナンシャルアドバイザー及び仲介業者の最終公表について」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2021/211007m_and_a.html

 

笹川 敏幸(ささがわ としゆき)
【執筆者プロフィール】
笹川 敏幸(ささがわ としゆき)

株式会社経営承継支援 代表取締役社長

大手M&A仲介会社にて中小企業の事業承継型M&A業務に従事。全国の商工会議所および会計事務所と協力し多数のM&A成約を支援。その後、東京都事業引継ぎ支援センター(現 東京都事業承継・引継ぎ支援センター)のサブマネージャーとして公的立場から中小企業M&A業務に従事。民間大手と公的機関、双方を経験し、M&A業務歴は20年以上。

【公的資格】
東京商工会議所 経営安定特別相談室専門スタッフ
東京都事業承継・引継ぎ支援センター 登録専門家