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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.20

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


よく集むるを知りてよく散ずることを知らねば、
その極、守銭奴となる。

【渋沢栄一 訓言集】:能く集め能く散ぜよ より


日本の家計の1,864兆円(うち現預金986兆円)、民間非金融法人の1,186兆円(うち現預金271兆円)という莫大な金融資産(昨年9月末時点)は、金融機関や年金基金など通じて経済社会へと循環します。  

ただ、この資金のほとんどが「前例」によって運用されています。
昭和時代の前例、平成時代の前例です。
つまり、日本人は渋沢栄一が警鐘を鳴らす「守銭奴」になっている恐れがあります

新しい令和時代には、過去の時代の前例による運用ではなく、これからの前例をつくる運用で新たなお金の流れをつくることが不可欠。
よく散ずることも知らなければならなりません。  

よく散ずるためには物事をしっかりと検討することは善です。
ただ、世の中から求められている中、日本の会社に意思決定のスピード感がないことは百害あって一利なしです。  

渋沢栄一の「論語と算盤」、つまり、己のためだけではなく世のためにという思想を投資の世界で表現すれば、それはポジティブで測定可能な社会的インパクト「と」経済的リターンを目指す「インパクト投資」でありましょう。  

経済的リターンを求める「おまけ」として社会貢献もしているということではありません。
経済合理性を度外視する慈善活動でもありません。
インパクト投資とはポジティブな社会的インパクトを意図として、その持続可能性を支えるために経済的リターンも必要であるという考え方です。  

インパクト投資のように新たな時代のための新たなお金の流れを官民連携で日本から世界へつくることは優先度が高い国策と位置付けるべきではないでしょうか。

(東商新聞2020年3月10日号 掲載)

 

足るを知りて分を守り、これは如何に焦慮すればとて、
天命であるから仕方ないとあきらめるならば、
如何に処しがたき逆境にいても、心は平らかなるを得る。

【論語と算盤】:大丈夫の試金石 より


私たちは現在、地球規模な危機の最中にいます。
人類は数多くの戦争を繰り返してきて局部的な破壊や悲劇は大きかったものの、新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界的な大流行)ほど広範的なスケールで世界の人々の日常生活を脅かしている危機は前代未聞です。  

こういった中、特に犠牲になっているのは社会の高齢者や貧困弱者という傾向があり、経済界では大企業と比べると中小・小規模企業の資金繰りが厳しい状況に陥っています。
間違いなく、世の中の多くが逆境に立たされています。  

渋沢栄一は「自然的逆境」に立った場合の心構えを言葉として残しています。

「足るを知る」—何かを失ったことにより、何が有るかに気付いて感謝する。
「分を守る」—やるべきことをきちんとやって身を守る。(例えば、うがい、手洗い、マスク着用、不急不要な外出自粛で「密閉」「密集」「密接」を避けるなど)
「仕方ない」—ジタバタするより、場合によっては思い切って断念する。  

これらは、新型コロナウイルスが日本で広まった当初、知人の医者がSNSで教えてくれた「色々な情報や状況に過剰に惑わされることなく『正しく恐れましょう』」という行動指針に通じるものがあると感じています。  

ただ、新型コロナウイルスは自然的な存在かもしれませんが、危機は「人為的な」側面もあります。  

渋沢栄一は「人為的な逆境」に立った時には、「自分からこうしたいああしたいと奮励」することが大事な心構えであると説いています。
もちろん、これはMEのための自分勝手な行動を推奨している訳ではなく、WEのための行動を自ら起こすべきという奨励です。  

新型コロナウイルス収束後、V型回復を望む声が多いと思います。
ただ、元に戻ることはないでしょう。
いや、元に戻すべきではない。
BC(Before Covid-19)と比べてAC(After Covid-19)はより良い世の中にしなければなりません。

(東商新聞2020年5月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm