東京商工会議所は、中小企業委員会において、標記調査結果をとりまとめました。
中小企業委員会では、会員企業の経営実態に即した支援策の実現を目指し、例年、「中小企業対策に関する重点要望」を国、東京都をはじめ関係方面に提出しています。
本調査は、新型コロナウイルスによる影響をふまえ、中小企業が抱える経営課題を検証し、要望事項のとりまとめに供するため、23区内中小企業・小規模事業者を対象に実施したものです。
1.新型コロナウイルスによる影響(売上、収益等)
◎売上・収益は全体として回復基調にあるものの、コロナ感染拡大前の水準には戻っていない。
■①一昨年2019年1月~9月まで (コロナ以前)と比較した今年2021年1月~9月(現在)の売上高
■②昨年2020年1月~9月まで(コロナ感染拡大直後)との比較
◎業種別では、情報通信業では売上が増加した事業者の割合が最も高く(下図①)、飲食・宿泊業は一昨年に比べて売上が50%以上減少した事業者が約7割を占める(下図②)。また、同じ業種の中でも売上が増加・減少、収益が黒字・赤字の企業が混在しており、K字回復の様相が見て取れる。
■左:昨年、2020年1-9月(コロナ感染拡大直後)と比較した2021年1-9月(現在)の売上高
■右:一昨年、2019年1-9月(コロナ以前)と比較した2021年1-9月(現在)の売上高
◎本年3月以降、47.4%の企業が何らかの補助金・助成金(※月次支援金・協力金や感染拡大防止協力金、家賃支援給付金は除く)を利用し、特に雇用調整助成金は27.0%が利用している(下図①)。また、事業再構築補助金(6.5%、下図②)や、テレワーク関連助成金(8.1%)・IT導入補助金(5.4%)など、IT関連の施策も多く活用されている。
■今年(2021年3月以降)に利用した(予定含む)補助金・助成金
2.資金繰り
◎約7割の企業が新型コロナウイルス関連融資を利用している。
■新型コロナウイルス関連融資の利用状況 ※()は2020年度
◎昨年4月より、中小企業再生支援協議会の支援により最長1年間の返済猶予要請が可能となる「新型コロナウイルス特例リスケジュール」が措置されているが、認知度は高くない。
■「新型コロナウイルス特例リスケジュール」の認知度
【参考】中小企業再生支援協議会
中小企業の事業再生に向けて、外部専門家を活用した再生計画の策定支援や金融機関調整、経営者の個人保証債務の整理を支援する国の機関
サイトはこちら:中小企業再生支援協議会 |東京商工会議所
3.ウィズコロナに向けた取り組み
◎昨年3月以降、コロナ禍において60.6%の企業が新たな取り組みを実施。具体的には「人材の採用・開発・教育の強化」が最多の27.8%(下図①)、続いて「デジタル化・ITツールの活用」にも多くの企業が取り組んでいる(下図②)。
新たな取り組みを行っている企業のうち、新分野展開や業態転換など「事業再構築」に取り組む企業は28.5%にのぼっている(下図③)。
■昨年2020年3月以降に新たに開始・実施した(予定・検討含む)取り組み
◎ITを活用するうえで、約7割の企業が何らかの課題を抱えている(下図①)。具体的には「IT導入の旗振り役が務まるような人材がいない」(下図②)「従業員がITを使いこなせない」など人材に関する課題が多い。
■ITツールを活用するうえでの課題の有無と具体的な内容
4.大企業との取引
◎大企業との取引のある企業のうち44.4%が何らかの問題・課題を感じており(下図①)、具体的な内容として最多となったのが「新型コロナウイルスによる業況悪化のしわ寄せ」で35.9%(下図②)。
◎「コストの価格転嫁が認められない」「根拠の不明な値下げ要請」など、価格交渉における課題(下図③)や、「手形・売掛金の支払いサイトが長い」や「手形の割引料・ファクタリングの際の費用」といった支払い条件に関する課題も多い(下図④)。
■大企業との取引において課題と感じるもの
東京商工会議所では、企業の皆さまの声をもとに、国や東京都に対して要望活動を行っています。
今後も、企業の実態を踏まえた要望活動を行ってまいりますので、ご意見がございましたら、下記リンクからお寄せください。
<「中小企業の経営課題に関するアンケート結果」詳細はこちら>
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1028121
<東京商工会議所の「意見・要望書」一覧はこちら>
https://www.tokyo-cci.or.jp/president/proposal/
<ご意見はこちらからお寄せください>
https://www.tokyo-cci.or.jp/covid-19/opinion/