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【連載】中小企業M&A(第1回)「実はM&Aの実態を知らない人の方が意外と多い」

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M&Aという言葉に皆様はどういうイメージをお持ちになるでしょうか。
以前に比べM&Aという言葉を聞く機会が増えてきて、皆様の中にもM&Aがどういうものかイメージが付く方も多いかと思います。ですが、そのイメージとはどういうものでしょうか。
おそらく、M&Aと聞くとニュースで取り上げられるような、大企業同士が行うもの、そういうイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

実はM&Aの成約件数の多くが中小企業同士によるものです。
しかも、中小企業のM&Aは『友好的』に行われています。

今回、中小企業M&Aのコラムをシリーズで寄稿させて頂きますが「なぜ、中小企業がM&Aをするのか?」という疑問をお持ちになるかもしれません。
実は、M&Aには大きなメリットがあります。

東京商工会議所が2021年2月に公表した「事業承継の取組と課題に関する実態アンケート報告書」によると、後継者の決定状況について半数近くの企業で後継者が決まっていない(「後継者を決めていないが事業は継続したい」、「自分の代で廃業する予定」等)と回答しています。
後継者がいない場合はその企業は将来どうなるのか、主な選択肢は二つしかありません。

<後継者の決定状況>

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出典:東京商工会議所「事業承継の取組と課題に関する実態アンケート報告書」P11

 

一つは「会社を閉じる」いわゆる清算廃業。もう一つは第三者の誰かに経営を委ねる「第三者承継」いわゆるM&A、この二つの選択肢です。
当たり前ですが、会社は従業員を雇用し、多数の取引先を持っています。もし、後継者が見つからず会社を清算廃業した場合、従業員は仕事を失い、取引先は継続取引ができず製品を作れなくなり、代替先を探さなければならない、このような事態が起こります。そのため、後継者がいなくても“会社を継続する”ことを望む社長は多く、もう一つの選択肢であるM&Aを選択する中小企業が増えているのです。

では、本当に中小企業がM&Aの対象となっているのか、「事業承継の取組と課題に関する実態アンケート報告書」を見ていきましょう。

<M&Aで譲渡した企業の従業員規模>

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出典:東京商工会議所「事業承継の取組と課題に関する実態アンケート報告書」P28

 

同報告書によると、M&Aで譲渡した企業の従業員規模で最も多いのが従業員20名以下の企業で、実に75.6%を占めています。
このように中小企業、特に従業員20名以下の小規模企業がM&Aの対象となっていることが明らかになっていますが、M&Aを検討する場合、どこにご相談したらよいのでしょうか。

主に中小企業のM&Aの相談窓口は下記の3つです。

 ① 地域金融機関
 ② 事業承継・引継ぎ支援センター
 ③ 民間のM&A専門業者

顧問税理士の先生もご相談を受付ける方もいらっしゃいますが、税理士の先生は必ずしもM&Aに精通しているとは限らない場合があるように見受けられます。
上記の窓口には、それぞれ特長がありますが、その点については今後のコラムでご紹介させて頂きます。

中小企業のM&Aの相談窓口となるM&A専門業者や金融機関などに対して中小企業庁は2020年3月に「中小M&Aガイドライン」を策定し、適切なM&Aのための行動指針を提示し、その遵守を求めています。
また、このガイドラインにはM&Aの基本的な事項や手数料の目安なども示されており、中小企業が安心してM&Aを検討することも目的としています。機会があればご一読をお勧めします。

今回のコラムは都内事業者の方が多くお読みくださっていると思いますが、東京商工会議所には「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」が開設されています。
当センターは、東京商工会議所が経済産業省関東経済産業局から委託を受け実施している国の事業で、民間M&A仲介業者では対応が難しい小規模な事業者のマッチングを中立的な立場で支援しています。事業承継・M&Aの相談は専門家を活用することが成功のカギとなるので、ご関心があれば是非お問い合わせください。

今回は中小企業もM&Aを実行している、また従業員20名以下の小規模企業においても、M&Aの対象となり得ることをお伝えいたしましたが、次回は事例を交えながら更にM&Aのメリットについて深堀していきます。

<この記事に関連するサイト>
東京都事業承継・引継ぎ支援センターHP
https://www.jigyo-hikitsugi.jp/

中小M&Aガイドライン(経済産業省HP)https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001.html

 

笹川 敏幸(ささがわ としゆき)
【執筆者プロフィール】
笹川 敏幸(ささがわ としゆき)

株式会社経営承継支援 代表取締役社長

大手M&A仲介会社にて中小企業の事業承継型M&A業務に従事。全国の商工会議所および会計事務所と協力し多数のM&A成約を支援。その後、東京都事業引継ぎ支援センター(現 東京都事業承継・引継ぎ支援センター)のサブマネージャーとして公的立場から中小企業M&A業務に従事。民間大手と公的機関、双方を経験し、M&A業務歴は20年以上。

【公的資格】
東京商工会議所 経営安定特別相談室専門スタッフ
東京都事業承継・引継ぎ支援センター 登録専門家