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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.17

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


銀行は大きな河のようなものだ。
銀行に集まってこない金は、 溝に溜まっている水やポタポタ垂れている滴と変わりない。
折角人を利し国を富ませる能力があっても、その効果はあらわれない。

【第一国立銀行株主募集布告】より

現在の日本にはタンス預金が50兆円ほど積み上がっていると推測されています。
ただ、「50兆円」と言ってもあまりにも大きな数字なので現実味がないかもしれません。  

では、一万円札を一枚ずつ重ねた1兆円を想像してみましょう。
高さがどれくらいになるか想像できますでしょうか。  

百万円の一束は、大体1センチぐらいです。
ということは、一千万円は10センチ。そして、一億円は1メートル。
ということは、十億円が10メートル、百億円が100メートル、千億円が1000メートル、つまり、1キロ。
その10倍は一兆円ですから、高さ10キロの一万円札の巨大なタワーになります。  

その巨大な一万円札のタワーの50本が、日本全国のタンスの中に眠っていて使われていないのです。
未来のための投資の資源がこれほど潤沢なのに、「大河」にならないことは本当にもったいないと思います。  

その理由は、ほとんどの日本人が「投資」という漢字を見ると連想することは「投」げる「資」金であると思っているからではないでしょうか。
お金を投げてしまうことはギャンブルなので、これが「投資」と連想すれば堅実な日本人に魅力はないでしょう。  

でも、「投資」を英語で表現するとINVESTと言います。
“IN”は入れること。
何を、どこに入れているのか。  

それは、“VEST”に入れています。
つまり、身に付けているチョッキのポケットに、自分の生活圏の枠の外から色々な視点や成長を呼び込む引換券のチケットを入れて身に付けていることがINVESTの本質です。  
教育も、自分の現在の枠の外から色々な視点や体験を呼び込んで成長を呼び込むこと。
「投資」とは自分を少しずつ大きく成長させるためなのです。
このようなお金の使い方への理解が高まれば、今日よりも良い明日という日本の新しい時代が必ず実現します。

(東商新聞2019年6月20日号 掲載)

 

すべてにおいて帰一が出来るか否かは判らぬけれども、
ある程度の帰一を期し得るものなればさようあらしめたい。

【論語と算盤】:これは果たして絶望か  より

それぞれが、それぞれの立場や主張があります。
けれども、同一のものに帰着する共通点は必ずあるはず。
日本が初めて議長国を務めたG20首脳会議の開幕後の記者会見で安倍総理が示した「意見対立ではなく共通点に光を当てた」ことは、渋沢栄一が求めた帰一です。  

その共通点のひとつに、高齢化と金融包摂のために首脳が承認した「G20 福岡ポリシー・プライオリティ」があります。
G20首脳会議に先立つワーキンググループの作業計画提案であり、6月6日に発表され、同月8~9日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議でも承認されています。  

「金融包摂」というと馴染みがない言葉ですが、近年ではファイナンシャル・インクルージョンとして日本国内でも使われ始めています。
全ての人が正規の金融サービスを、適正なコストの元で、有効にアクセス・利用できることです。
年齢を問わず、人々の様々なライフステージにおけるニーズに応えられる金融サービスおよび制度設計への呼びかけです。  

「人々が長生きを享受するほど、特に老後において、経済的ニーズに対する計画や管理をこれ以上にしなければなりません。年をとるにつれ、貯蓄や所得の不足と追加的な支出の増加によって、困難や貧困に陥るリスクも高まります」と提案書は指摘しています。  

この「G20福岡ポリシー・プライオリティ」がG20財務大臣・中央銀行総裁会議で承認されたのは6月8〜9日。
ちょうど「老後資金2000万円問題」が一部マスコミや野党の煽りで注目が集まり、政局が緊迫したタイミングです。  

問題とされた報告書が参議院選挙を控えたタイミングで発表されたのは金融庁の「政治オンチ」ではなく、G20首脳会議に向けて日本が議長国として世界に発信する議題の土台をしっかりと固めることでした。  

それぞれが、それぞれの立場や主張がありますが、今後の日本の人口ピラミッドの変化および現役世代の保険料を財源とする公的年金の制度設計からはっきりと見える課題は、40代以下の資産形成の向上です。

(東商新聞2019年9月10日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm