〜経営に役立つ情報・事例を発信するサイト〜
powered by 東京商工会議所

【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.15

f:id:tosho-antenna:20200716154204j:plain
東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


とにかく人は誠実に努力黽勉(びんべん)して、
自ら運命を開拓するがよい。
かくて敗れても飽くまで勉強するならば、
何時かは再び好運に際会する時が来る。

【論語と算盤】:成敗は身に残る糟粕(そうはく) より

 
文武両道で先月末のプロ野球ドラフト会議で中日ドラゴンズに1位指名された、大阪桐蔭高校の根尾昴選手の愛読書リストに「論語と算盤」が入っているということが話題を呼びました。
学校の成績が優秀とはいえ、平成生まれの高校生が明治時代の実業家の思想に関心を持つことに驚きが多かったと思います。

しかし、私の反応は「ほお、根尾選手もか」でした。
実は他の著名なプロ野球選手も「論語と算盤」を読んでいることを知っていたからです。
今シーズン、アメリカ・メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスにおいて二刀流で晴れ晴れしいデビューを飾った大谷翔平選手です。

根尾選手に「論語と算盤」を薦めたのは父親のようですが、大谷選手に薦めたのは北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督。
監督の2年目に日本ハムが最下位になったとき、自分は監督に向いていないかもしれないと悩んだようです。

そのとき手に取ったのが「論語と算盤」。
何度も読んでいた言葉が、新たな意味で胸に刺さったようです。
目的通りにならない場合は、未だ機が熟していないと腹をくくって努力を続けて運命を拓く。

その体験があるからこそ、栗山監督は入団2年目の全ての若手選手に「論語と算盤」を読むよう指導しているようです。
そして、大谷選手は誠実に自分の目標達成表へ「論語と算盤を読む」と書き込みました。

渋沢栄一と大谷選手の共通点は既存の枠にとどまらない型破りであることです。
根尾選手にも同じような期待が高まっています。

つまり、既存の枠の内側にとどまることに満足していなく、自分で何をすべきかという目標を定め、自分自身が考える正しい道理によって、新たな自分、新たな仕事、新たな社会を切り拓いていく。
このスイッチを常にオンしていくことによって、好運を招く

そのようなことを知っているのでしょう。

(東商新聞2018年11月20日号 掲載)

 

この信の一字を守ることができなかったならば、
我々実業界の基礎は強固ということはできない

【論語と算盤】:道理ある希望を持て  より


信用は企業にとって最も重要な資本です。
そして、その信用の本源とは、企業が掲げている看板やブランドではなく、そこで働いている人たちです。

信用には新陳代謝が必要であり、過去の上にあぐらをかくことに道理があるとは言えません。
経営者、管理職、現場が、それぞれの立場における日々の行いによって企業の信用がつくられています。

また、信用を守るということはマニュアルやルールの遵守だけではありません。
悪い事をしない誠実さでも足らないでしょう。
渋沢が唱えているように、「道理ある希望を持つ」という指針が信用に必要です。
現状維持には満足せず、今日よりもよい明日を目指す向上心です。


世界情勢が不透明である今だからこそ、様々なリスク要素を直視しながらも、見えない未来を信じる力。
この「エネルギー革命」が大事です。

渋沢栄一は、今でも声を上げています。
「未来のことに向かってぜひとも理想は持つべきものである。」

新しい時代において日本企業が世の中で果たすべき役割は明らかです。
平和でサステナブルな未来をデザインする世界のロールモデルとして振る舞うことです。

希望的な観測ですが、新しい年号、新しい時代の曙であるからこそ、道理ある希望を持つべきではないでしょうか。

(東商新聞2019年2月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm