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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.14

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


善事ということについては
見方が世の進歩と共に色々に変わるということがありませぬか

【論語と算盤】:道徳は進化すべきか より

 
数十年前の日本社会と現在と比べて何が一番大きく変わったといえば、それは外国人労働者の存在でありましょう。
そういう意味では彼らの存在は日本の社会構造の一環となりつつあるので、外国人へ善事の感情も進歩する必要があります。

現在、外国人技能実習生という制度が課題になっています。
良い雇用者であれば問題ありません。
ただ、きちんとコミュニケーションを取れていない外国人が認知しないまま除染作業を行うなど過酷な労働条件を強いられ、文句を言えば雇用主から解雇を言い渡され、転職の自由が無い実習生は帰国を余儀なくされます。

ところが、ブローカーなど送出機関から借金している場合がある彼らは職を維持する必要があるため逃げてしまいます。このような課題もある制度です。
海外では「技能実習は近代的な奴隷制度ではないか」との声まで上がっているようで、この状態を放置しておくことは、特に東京2020大会に向けて芳しくない実態です。

このような問題意識をもった民間有識者会合のメンバーとして「より適正で包括的な外国人労働政策の実現を」という提言書を7月下旬に外務大臣に提出しました。
外務省のサイトに掲載されましたので一読ください。

政府は、これらの問題を認識しており、外国人労働者政策の施行に取り組んでいます。
ただ、人手不足の解消策という側面で政策を通すことが最優先されていると感じ、これは将来の日本社会の不安定要素となるリスクもあると思います。

我々は、国内労働者との摩擦の可能性を軽減するため、外国人の客観的な労働市場のテストや有効求人倍率が高い職種・地域に基づいたクオーター制、あるいは外国人の社会統合政策など、もっと丁寧な政策づくりを提言していく必要があると思いますがいかがでしょう。

(東商新聞2018年8月20日号 掲載)

 

いったい形式的に流れるのは、
新興国の元気鬱勃たるところには少ないもので、
長い間、風習がつづいた古国に多いものである

【論語と算盤】:日新なるを要す より


新興国の場合は発展への意気が溢れているので形式に捉われることなく、今日よりもよい明日の実現のために、ともかく新たに挑戦する傾向があります。

一方、先進国で、かつ、高齢化少子化社会である日本では、今日と同じ明日を求める向きが多く、慣習や前例なども含む形式を重んじてチャレンジ精神が乏しいと指摘される側面が多々あります。
栄一は、「幕府が倒れたのはその理由からであった」と形式に捉われることに懸念を示していました。

ただ新興国は日本への憧れもあります。
社会的インフラなどが整って、国民が安心安全で豊かな日常生活を送れているからです。
そして日本は新興国の国民が今日よりもよい生活を向上する技術やノウハウを持っています。

これは必ずしも大企業に限ったことではなく、日本各地の中小企業も世界の持続可能な発展に役立つことができます
むしろ大企業の方が様々な組織内外の形式に捉われて動きが鈍くなる場合がある一方、中小企業の方が経営判断を素早く執行できる優位性があるでしょう。

ただ、新興国への事業進出の際の人的・財務的リソースは大企業と比べて、中小企業の場合は手が回らないという現状もあるかと思います。
先日出席した会合では、アフリカ某国の大使が、日本では中小企業という存在であってもアフリカ現地ではそれなりの規模の会社になると指摘していました。

それも、経済的な発展に加え、新興国のよりよい社会を築くインパクトある仕事も日本の中小企業は実現できると思います。
かつて新興国であった日本も今年で「明治150年」を迎え、新しい元号の時代が来年から始まります。

これからの時代において、今までの形式に捉われない、経済的リターンと社会的リターンも還元する日本から新興国への社会インパクト投資の気運が高まっています。

(東商新聞2018年9月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm