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新入社員意識調査から紐解く、コロナ禍就活の実態と若手社員の特徴 ~「成長したいのに時間は気にする」若者は何を考えているか

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東京商工会議所は、2021年度新入社員研修を受講した新入社員の意識調査を実施しました。
本稿では、今回の意識調査をもとに、新卒採用マーケットにおいてコロナ禍が就職活動に与えた影響と、近年の若手や新入社員の特徴を紐解いていきます。

<ポイント>

コロナ禍において就職活動プロセスでの負荷が高まった

受験社数の増加、活動期間の長期化、スケジュール変更の多発、
オンラインという新しい手法への対応など、活動中の負荷が高まった。

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近年横ばいで推移していた「厳しかった」「やや厳しかった」と答えた割合が50.0%と増加に転じました。
前回調査の2019 年度時(2020年度は調査実施せず)と比較して4.2ポイント増加し、「やや厳しかった」も合わせると、9.8ポイント増加しました。


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「採用枠が少なかった」こと以上に「就職活動中」での苦労が目立つ

本調査において「1人あたり平均企業内定数」(図2)が減少に転じ、大卒求人倍率も2020年度の1.83倍から2021年度には1.53倍まで減少したものの(※1)、売り手市場であることには変わりなく高止まりしています。

また、「就職活動で苦労したこと」(図3)のアンケートの結果においても、「採用枠が少なく競争が激しかった」の回答率は2018年度相当に留まりました。

一方で、「説明会や面接の日程・時間の調整」や「内定の決定が遅く活動期間が長かった」が例年と比較しても特出しています。

以下、21年度就職活動で何が起こっていたのか整理します。

受験社数の増加

ひとりあたりの平均選考受験社数は21年度:9.83社と、20年度:8.36社から増加しました(※2)。
コロナ禍による就職不安の広がりや、オンライン化で選考参加しやすくなったことを背景に、受験社数が増えたと考えられます。
なお、例年ランキング上位だった「スーツや交通費に予想以上にお金がかかった」は今年度最下位に転じており、受験する際の障壁であった活動費の負担は軽減されたといえます。

採用プロセスの見直し、スケジュール変更が多発

企業へのアンケート(※3)では、約8割の企業が、全体的または一部、採用活動プロセスに見直しをかけたと回答しており、伴って就職活動生側でもスケジュール変更が迫られたケースが多発していたと推測することができます。

就職活動の長期化

実質的な就活期間は、20年度:6.38カ月、21年度:7.80カ月と、長期化しています(※4)。
インターンシップに参加した学生は経年的に増加中でそもそも長期化が進んでいた上に、例えば「最終面接は対面で実施したいので、状況が落ち着いた後に実施」など、企業のコロナ対策に伴った選考期間の延長が重なった結果と考えられます。

オンラインへの対応

「就職活動で苦労したこと」(図3)の調査結果の中で、例年より大きく増加している「その他」の回答の多くは、オンライン対応に関するものでした。
「話すタイミングが難しかった」「企業ごとに使用ツールが違う」「雰囲気が分かりづらかった」など、面接でのコミュニケーション、通信環境の整備、企業の定性的な情報取得で苦労したとの声が挙がりました。

 

上記のように、初めての新型コロナウイルス対策下での就職活動であった21年度においては、例年と比較しても就職活動生の負荷が高かったといえます。
次に、そんな彼らが何を求めて就職活動をしていたのか、どんな事を不安視しているのかなど、その志向や特徴について整理します。

※1:リクルートワークス研究所「第37回 ワークス大卒求人倍率調査(2021年卒)」より
※2:就職みらい研究所「就職白書2021」就職活動プロセスごとの実施状況 より
※3:就職みらい研究所「第4回 人事担当者対象調査 3月時点」2021年3月31日より
※4:就職みらい研究所「就職白書2021」実質活動期間の平均 より

就職先に求めることは『自己成長』
背景には「会社に依存してはいけない」

2021年度はコロナ禍による不安から企業依存傾向が強まったものの、
「成長せねばならない」「会社依存ではいけない」という志向は底流。

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「定年まで」は近年減少傾向にあったが、今回29.3 %となり前回より増加しました。
その裏で、入社時点の「チャンスがあれば転職」「将来は独立」「時機を見て退職」の合計値は2021年度も28.4%と、近年増加し続けています。

「定年まで」という回答の割合は、前回より増加したとはいえ、東日本大震災時の2012年度や2017年度よりも割合は低く、中長期に及ぶ意識の変化の表れというより、コロナ禍による一時の変化と考えるほうが妥当といえるでしょう。

むしろ中長期の変化で特記すべきは、彼らの自己成長意欲の高まりです。
実際に、就職活動生の働きたい組織の志向性を問う調査では、「その企業に属していてこそ役に立つ、企業独自の特殊な能力が身につく」よりも「どこの会社にいってもある程度通用するような汎用的な能力が身につく」を志向する就職活動学生の割合が、16卒:63.4%、17卒:64.7%、18卒:70.4%、19卒:72.4%、20卒:72.5%、21卒:71.4%と、経年的に高まっている傾向が見てとれます(※5)。

  • 右肩上がりの経済成長期を知らず、リーマンショックや東日本大震災を経験
  • 「人生100年時代」「ジョブ型雇用」などが叫ばれている状況

など、現在の就職活動生や若手や新入社員が過ごした時代背景から考えると、彼らが「世の中何があるかわからない」「ひとつのコミュニティへの依存はリスク」といった価値観を持つ傾向が出ており、キャリア形成における『安定』の意味が「今の事業が安定している企業や団体に所属すること」から、「所属する企業や団体に関係のない、自身の市場価値を高めること」へと変化しつつあると考えることができます。

※5:就職みらい研究所「働きたい組織の特徴」(2016年卒ー2021年卒)より

『働く自分をイメージできるか』で慎重に所属コミュニティを選ぶ

就職先は簡単にリセットできないコミュニティだからこそ、
「実際にはどんな日常を過ごすことになるのか」をイメージしたい。

 

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「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」が51.5%で最上位でした。
「仕事が自分に合っているか」「仕事と私生活のバランスが取れるか」も同水準で上位となりました。

スマホ・SNSネイティブである現在の若手や新入社員にとっては、「リアルなものもデジタルなものも含めた複数のコミュニティに所属していること」 や「自分に合う人やコミュニティを選択すること」が当たり前になっています。
また、彼らにとってスマホやSNSは、合う人と「つながるため」のツールであると同時に、合わない人やコミュニティを「排除、リセットするため」のツールでもあります。

ところが、就職先企業は、すぐに排除、リセットできるコミュニティではなく、職歴・経歴に離職の記録が残るため、より慎重に「自分に合うかどうか」を判断しなければいけません。

本調査の回答の上位となっている、

  • 「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」という人間関係
  • 「仕事が自分に合っているか」という業務適性
  • 「仕事と私生活とのバランスが取れるか」という働き方(時間の使い方)

といった項目は、所属するコミュニティが自分に合うかどうかを慎重に見極めたい若手や新入社員たちが「知りたいと思うが、実際には知ることができていない」と感じている項目だといえます。

  • 「採用担当者は良い人だが、実際に働く際にはどんな人と働くことになるのだろう。」
  • 「仕事内容や勤務時間、残業、休日についての情報記載は大量にあるが、実際はどんなことをして、どんな時間の使い方をするのだろう。」

上記のように、若手や新入社員は「実際にはどんな日常を過ごすことになるのか」ということをイメージできるところまで情報収集をしたい、と考えているのではないかと筆者は捉えています。

魅力に感じるのは「時間」と「成長」に関わる項目

「会社以外のコミュニティに使うことのできる時間はあるのか」に興味あり。
 自社に成長環境があるかどうかは意外と伝わっていない。

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休日や時間に関係する「年次有給休暇取得の推進」、「時差出勤・フレックスタイム制勤務」が上位になりました。
「資格(検定)等の取得支援」、「人材育成体系(研修計画)の充実」など、入社してからの成長環境に関する制度も上位になりました。

複数のコミュニティに所属することが当たり前の若手や新入社員は、就職先企業も「所属するコミュニティのひとつ」と捉える傾向にあります。
動きたくないから、楽をしたいから ということより、所属するコミュニティやすべき活動が多いため「どのくらい自由な時間があるのか」ということに興味が出ていると考えられるのです。
企業はこういった理解の下「時間」に関わる情報を意識的に適宜伝えていくことが求められています。
 
資格取得や人材育成の充実に魅力を感じているという回答結果は、既述の「自身の市場価値を高めること」を求める若手の志向に連動しているということができ、こちらも抑えておくべきポイントです。
なお、こういった人材育成の施策については、企業側は伝えているつもりだが、実は求職者には伝わっていないという調査結果も出ており(※6)、「OJTをしている」といった抽象度が高い伝え方ではなく、「〇〇〇〇〇〇研修」と名前がつき、体系立てられ、計画立てられた、具体的な研修コンテンツを伝えることも重要です。

※6:就職みらい研究所「就職白書2021」 企業が提供した情報と学生が知ることができた情報 より

いかに自社を彼らのメインコミュニティにするか

自社のことを「ウチ」と呼べるかどうか がメルクマール。

 複数のコミュニティに所属しうる若手や新入社員に対峙するにあたり、企業としては「いかに自社が彼らのメインコミュニティになるか」という観点が大切です。

そしてそのためには、自社というコミュニティに対して、いかに当事者意識を上げてもらうのかがポイントです。

そう考えた時、まずは若手や新入社員が自社のことを「ウチ」と呼べるかどうかがひとつのメルクマールになります。

具体的には、

  • 社外のセミナーや勉強会・研修に参加する
  • 採用活動に参加させる
  • 営業・接客・サービスなど 顧客と接する業務担当との同行

など、若手や新入社員の方が自社外と接する機会を意図的に創りだすことで、自分の所属するコミュニティが自社なのだと認知してもらうための施策がより一層必要になってくるのではないかと筆者は考えています。

 

髙野 先生(髙野 先生)
【執筆者プロフィール】
高野 有麻(たかの ゆうま)

株式会社インオーダー 組織風土改革パートナー

<略歴>
京都大学文学部卒。2008年から同社に参画。
入社からの13年で、メーカー / インフラ / 接客 / 福祉 / 教育 / 小売り / 流通 / 金融 / 商社 / IT など幅広い業界の中小企業・事業主に対して、約2000社以上の採用支援、教育研修、企業風土改革支援サービスを実施。

「現場での知見」をもとに、採用を起点とした組織構築のノウハウを「移植」することで「自立自走可能な人事」づくりを支援。
近年では、それらの知見を体系立て、講演・講習・講座にも従事している。


<この記事に関連するサイト>

【オンライン研修講座(Zoomライブ配信)】「自ら考え動く」チームづくり講座
 http://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-103272.html

 ※本コラムを執筆いただいた高野先生によるオンライン研修講座です。