※本記事は、東商新聞 2021年5月20日号に掲載したコラムをWEBページ用に再編・掲載しています。
前回は“サイレントクレーム”がTwitterにて拡散され炎上に至る過程を説明したが、今回はそうしたリスクにどのように向き合うか解説する。
■前回記事はこちら
日々新たなリスクが生まれるネットの世界
ネットでの炎上事案の件数は、2020年において前年比15.2%増加したが、内訳には変化が生まれている。
19年は“バイトテロ”に代表されるように、ユーザーの動画投稿がきっかけとなった炎上が増加したのだが、その誘因はInstagramの新機能や、TikTokといった動画投稿SNSの普及にあった。
20年は新たなSNSの普及こそなかったが、コロナ禍に伴い自宅で過ごすことでSNSの利用時間・利用率も伸び、これまで以上にインターネットの利用総数が増大。それに合わせてネットメディアの運用方法も変化した。
ネットメディアの収益源は広告収入であり、その収入を増やすにはサイト訪問者の増加が必要だ。
そのため一部のネットメディアでは、週刊誌の中吊り広告のような過激なタイトルをつけてユーザーの興味を惹き、自サイトへのアクセスを増やそうとする動きが見られている。
これが最近のトレンドである「非実在型炎上」―実際には炎上(批判が殺到)していないのにあたかも炎上したかのように取り上げる―の記事が出回り、そのこと自体がネットで話題になってしまうという流れにつながっている。
こうしたメディアの変化に巻き込まれると、火の無い所にも煙が立ってしまうことになるのだ。
21年初頭には「Clubhouse」という音声SNSがブームになり、マスメディアでの露出も増えたが、そこでも既に新たな炎上事案が発生している。
このように、既存メディアの変化や新規メディアの台頭により、新たなリスクが発生し続けていると言える。
こうした変化についていかないと、知らぬ間に広がるリスクに対応できない。
なぜならば、ユーザーはメディアの変化に合わせて利用方法も変えているのだから。
ネットの論調の変化に敏感でいるために
こうしたネットの変化に敏感でいるためには、社内で最もネットを利用している社員を指名して、最近各SNSでどういうことが起きているのかを定期的にヒアリングする方法が最も確実かもしれない。
もちろん、経営者自身でアンテナを張り情報収集することがより望ましいが、元々ネットに明るくない場合はハードルが高い。それならば詳しい社員に協力してもらうべきだ。
また、特定の社員をネット担当に指名した上で、定期的に自社や製品・サービスのネット上での評判を調べてもらうことも有効だろう。
業界内でよく利用される口コミサイトや掲示板があればそこで自社のことが書かれているかもしれないし、転職情報が集まる掲示板やGoogleマップにおいては、どのような業種でも口コミが投稿される可能性が存在する。
ネットの変化と共に、自社のレピュテーション(評判)にも敏感でいたい。
併せて、こうしたリスクの最新情報を扱うネットメディアやセミナーのチェックも推奨する。
当社でも毎月、最新の炎上事例を解説する無料セミナーを開催しているので、興味があればぜひ役立ててほしい。
シエンプレ主任コンサルタント
デジタル・クライシス総合研究所主席研究員も兼務。
<この記事に関連するサイト>
東商新聞 2021年5月20日号(7面に掲載)
https://www.tokyo-cci.or.jp/newspaper/file210520_5-8.pdf
東商新聞 デジタル版(最新号・バックナンバー)
https://www.tokyo-cci.or.jp/newspaper/