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【健康経営実践コラム】きょうも健やか!(第2回)「こんな運動でも、健康効果はある!」

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※このコラムは、健康リテラシー向上に向けた情報提供を目的として、東京商工会議所のメールマガジン「健康経営倶楽部マガジン」にてに配信したものです。
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肥満や生活習慣病を改善するための有酸素運動というと、ウォーキングやジョギング、水泳などを思い浮かべるでしょう。
 
これまでは一般に、こうした運動をほぼ毎日(週5日間以上)合計30分間以上続けることが勧められてきました。けれども最近では、こうした条件を満たさない運動でも、十分な量をこなすことで効果があることが明らかになってきました。これは、毎日の運動の状況を細かく記録できるデバイスの進歩のおかげです。

毎日でなくてもまとめて運動するのでもよい

平均年齢41歳の比較的若い年齢層を対象にしたカナダの調査では、対象者に活動量計(運動強度を時々刻々記録できるデバイス)を1週間装着し、運動量のパターンを調べました。
その結果、運動量の少ない人ではメタボリックシンドローム(メタボ)のリスクが高く、運動量の多い人ではリスクが低いことがわかりました。
ここまではわりと当たり前の結果です。

しかし、十分な量を動いている人について見ると、運動を従来の指示通り週5日間以上行っていても、週4日間以下でまとめて行っていても、メタボのリスクに差は見られませんでした。
十分に動いていれば、運動の頻度は少なくてもよいということです。

ただし、平均年齢66歳の高齢者を対象に運動頻度の健康への影響を見た調査では、肥満や高血圧、高コレステロール血症などの病気がすでにある人では、1週間の運動が十分量でも死亡リスクの低下はなく、こうした病気をもたない人では、運動をまとめてやっても死亡リスクの低下が認められました。
1回運動すると、その後は血圧が低下するなど、運動には急性効果があり、すでに病気がある人では、こうした急性効果を狙って定期的に運動する必要があるのではないか、とこの調査を行った研究者は述べています。

運動をまとめて行って効果が得られるのは、予防の段階にある人といえそうです。

運動時間は10分以下でもOK

昔は「運動は20分、30分以上続けないと脂肪が燃えない」とよくいわれてました。
実際には中位の強度の運動であれば、運動開始直後から脂肪は利用されるので、これは欧米の健康運動の指針を輸入した1980年代に生まれた、まったくの誤解です。
現在では運動は合計時間で考えればよいとされ、動く量を増やすことを勧める観点から10分間が1つの単位とされています。

しかし、活動量計を使って、中〜高強度運動を、持続時間が10分間以上と10分間未満のものに分け、それぞれ1週間のエネルギー消費量を足し合わせていくと、メタボのリスクの低下に及ぼす効果は、10分間以上と10分間未満でもまったく差はありませんでした。
同様に、メタボを構成する血圧や脂質などの指標やBMIの低下に及ぼす効果も、10分間以上と10分間未満では差が認められません。

目の前の人に動く量を増やすように指示するには10分間といったまとまりのよい数字で指示する必要があるわけですが、実際には、もっと細い運動の持続時間でも健康上の効果は同じなのです。
となると、ターミナル駅の階段を上り下りのように高強度でも10分間以内で終わってしまうような日常の生活活動も、それを大量にこなせば健康上の効果があるということになります。
スマホを持ち歩く人は多く、ウエアラブル端末を腕に着けている人も増えました。
こうしたデバイスで、1日の運動量の合計を見ながら、自分でそれをコントロールしていくような時代になりつつあるのです。


※この記事は、執筆時点での情報に基づき作成しております(執筆年月日:2019年4月17日)。

【監修】
勝川 史憲(かつかわ・ふみのり)

慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授

1985年慶應義塾大学医学部卒業。
慶應義塾大学スポーツ医学研究センター助手などを経て現職。
専門は、若年肥満、メタボリックシンドロームの運動・食事療法。
運動と食事の両面から生活習慣病に取り組むスポーツドクター。

 
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<この記事に関連するサイト>
健康経営倶楽部|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/