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【デジタル・クライシス対策最前線】第1回「コロナ禍におけるデジタル・クライシスの高まり」

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※本記事は、東商新聞 2021年3月20日号に掲載したコラムをWEBページ用に再編・掲載しています。


この一年は言うまでもなく、コロナ禍により世界中が予想だにしなかった状況を迎えている。
特に首都圏は、国内でも最も大きな影響を受けた地域だと言えるだろう。
そんな中で広がる社会的不安を背景に、実は“デジタル・クライシス”が拡大している。

コロナ禍による不安が招くデジタル・クライシス

デジタル・クライシスとは、これまであったウェブ上のリスク(デジタルリスク)や、ネット上の風評被害、SNSでの炎上がさらに進み、企業の社長交代や業績悪化、株価下落、果ては倒産・廃業といった、正に“クライシス”を招いている状況を指す言葉だ
当社の調査によれば、昨年は年間で1,415件の炎上事案が発生し、その約25%が従業員300人未満の企業だった。

ニュースで大々的に取り上げられる事案は芸能人や大企業関係が多いが、実はその裏では様々な規模の企業に多くのリスクが生まれ、クライシスに行き着く可能性があった。
つまりは、読者の皆さんにとっても、決して他人事ではないということを伝えておきたい。

コロナ禍は社会や経済などに様々な変化をもたらしたが、企業におけるデジタルシフトもその一つだろう。
また消費者においても「SNSの利用時間が増えた」と回答した人が34%(アライドアーキテクツ社調べ)にも上っている。
これはコロナ禍による巣ごもり需要によるものと言えよう。

同時に社会的不安から「コロナうつ」が生まれ、「自粛警察」といった言葉の流行からも分かるような不寛容な社会になっていった。
そして、利用者が拡大したSNSの中では、ユーザーのストレスから過激な言動に走る傾向が見られるなど、SNSの不健全な状況は、前年比で15%増加した炎上件数にも表れている。

社会的不安と直結する炎上件数

昨年の炎上件数は前年比で15.2%増加し、国内において最も社会的不安が高まった4月には、前年同月比で3.4倍にも膨らんだ。
その後は企業側のプロモーション自粛もあり一度は落ち着いたものの、コロナ第3波(11月頃~)の到来と共に再度増加していった=図。

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これらを踏まえると、やはり社会的不安が炎上件数の増加、つまりはデジタル・クライシスのリスクの高まりを生んでいると言えるだろう。

そのような状況の中で、企業は難しい経営を強いられることになる。
売上を安定させるためには、販売促進や従業員の労働力確保が必要であるが、そこにはこれまで想定していなかったリスクが存在するということを忘れてはならないのである。

本連載では、デジタル・クライシス対策の最前線から、リスクマネジメントに関する最新情報を解説していく。

 

【執筆者プロフィール】
桑江 令(くわえ・りょう)

シエンプレ主任コンサルタント
デジタル・クライシス総合研究所主席研究員も兼務。


<この記事に関連するサイト>
東商新聞 2021年3月20日号(7面に掲載)
https://www.tokyo-cci.or.jp/newspaper/file210320_5-8.pdf
東商新聞 デジタル版(最新号・バックナンバー)
https://www.tokyo-cci.or.jp/newspaper/