〜経営に役立つ情報・事例を発信するサイト〜
powered by 東京商工会議所

【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.10

f:id:tosho-antenna:20200716154204j:plain
東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


正しい道理の富でなければ
その富は完全に永続することができない。
従って、論語と算盤という懸け離れたものを一致させる事が
今日のきわめて大切な務めである。

【論語と算盤】:論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの より

 
「結果がすべて。」日常で、よく耳にする表現です。あるべき理想を追求するより、「なんぼ儲かった」という現実に直視すべきという主張です。

確かに収益は社会の経済成長を支える基礎であり、渋沢栄一も人々が「欲望」を持つことは不可欠であると説いていました。
一方、目前の利益追求という結果だけに満足すべきではないとも警告しています。

つまり、私たちが目指すべきところは、富の永続性、つまり、サステナビリティであり、そのために「正しい道理」が必要であるという提唱です

結果が全てではなく、正しい道理も大切。
実は投資の世界でも、近年、このような意識が広まっています。ESG投資です。

企業の目前の収益性だけではなく、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の取り組みにより価値創造の持続性に投資する戦略です。

15~20年ぐらい前から一部の専門家が重視していましたが、リーマン・ショックという金融危機を経て、特に欧州諸国からESG投資の意識が高まりました。
日本では世界最大級の投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年にPRI(国連責任投資原則)に署名し、今年から1兆円規模のESG投資を実施し、将来的に3兆円へ引き上げることを表明しています。

また、2015年には国連は、SDGs(持続可能な開発目標)を採択しました。
人間社会が抱えている世界的課題の17の目標、169のターゲットです。
壮大なメニューであるからこそ、政府のみならず、民間の大中小企業に問わず、世の中の持続性の当事者として誰でも参画できます。
正しい道理の富の追求が時代の潮流です。

(東商新聞2017年8月20日号 掲載)

 

はつらつたる進取の気力を養い、
かつ発揮するには真に独立独歩の人とならねばならぬ

【論語と算盤】:細心にして大胆なれ より


真面目で几帳面なところ。これは日本人の長所であるといえるでしょう。
ただ、気をつけないと、その長所は短所になる可能性があると渋沢栄一は注意します。

「余りに堅苦しく物事にこだわり、細事に没頭するときは、自然にはつらつたる気力をすり減らしてしまう。」
前例に過度にこだわると新しい取り組みに門を閉じ、形式を過度に要求すると事が進まなくなり、失敗を過度に恐れるとチャレンジ精神をそぎ落とします。

「細心な用意なる努力は必要であるが、一方、大胆なる気力を発揮して細心大胆両者ではつらつたる活動をなし、初めて大事業を完成しえるものであるから近来の傾向については大いに警戒しなければならぬ。」

一点に集中するあまりに、視野が狭まってしまえば本末転倒です。
細部に気を使っていながら、実は思考停止に陥っています。
もっと大らかに、大丈夫、大丈夫という姿勢こそ、可能性を広めて気力を養います

そういう意味で、「働き方改革」が労働時間の細部な管理制度の強化に留まるようでは、鋭意民力が伸び広がるわけがありません。
「働き」=「時間」という次元に捕らわれているようであれば、本当の改革になりえません。

神は細部に宿るかもしれませんが、神の視野はとてつもなく広いです。
部分最適だけでは、全体最適へとつながりません。

(東商新聞2017年9月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm