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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.9

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


我が国今日の状態は、姑息なる考をもって、
従来の事業を謹直に継承して足れりとすべき時代ではない。

【論語と算盤】:勇猛心の養成法 より

 
私が主宰している「論語と算盤」経営塾の第9期が今月から始まりました。
経営者から大学生まで、平均年齢が41.5歳の43人の精鋭のお申し込みをいただき、前期から27%の増員、4年前から倍増しています。
第1期の女性参加はゼロでしたが、今期の半数が女性です。
「論語と算盤」が、密かなブームになっています。

その理由は、渋沢栄一の思想をそのまま現代において継承することではないと思います。
温故知新という教えがあるように、古きから学ぶことは新たを生むためです。
「論語と算盤」に普遍性があるのは、渋沢栄一の言葉には未来志向があり、現状維持に満足せず、持続的な価値創造による発展を求めていたからです

その場逃れではなく、現状の課題に直視し、解決策に努めることを行動指針としていた渋沢栄一が、我が国の財政の今日の状態をどのように評価したでしょうか。
莫大な負債を抱えても、資産で間に合わせることができるから大丈夫、とは決して言わなかったでしょう。

このままの現状が維持されれば、40代以下の世代が将来に承継するのは天文学的な借金です。
若手世代が生涯にわたり経済的に安定した生活を営むことができるファイナンシャル・インクルージョンが不可欠な昨今です。

(東商新聞2017年5月20日号 掲載)

 

とかく世の中の青年は、
人の結末だけを見てこれを欽羨(きんせん)し、
その結末を得る原因がどれほどであったかということに
見到(いた)らぬ弊が多くてならぬ。

【論語と算盤】:すべからくその原因を究むべし より


渋沢栄一と同じ激動の時代に生きて、そして、明治天皇の後を慕って殉死した陸軍大将の乃木希典(まれすけ)。
二人は個人的な付き合いがあったわけではないようですが、「実に忠誠実無二の人である」と栄一は乃木大将を評価し、「末期における教訓が尊いというより、むしろ生前の行為こそ真に崇敬すべき」と付け加えています。

今回ご紹介している渋沢栄一の言葉は、トム・クルーズと渡辺謙が主役で、明治初期に時代から取り残された侍たちの生き様を描いた洋画「ラスト・サムライ」の最後のシーンの名セリフを連想させます。

勝元盛次(渡辺)の最期について明治天皇が“Tell me, how did he die”と問うと、ネイサン(クルーズ)が “No, but I will tell you how he lived.”と答えます。

現在の社会の文脈に置き換えると、結果だけを見て、事を判断すべきではないということだと思います。
「売上」や「利益」という結果は簡単に計測(見える化)できます。
多ければ、成功。少なければ、失敗。
ただ、結果が出ないことは無意味なのでしょうか。

渋沢栄一が乃木希典を、ネイサンが勝元盛次を評価したように、人間だからこそ出来ること、あるいは、やるべきこと、この生き様には大きな意味があります。
成功を達するから価値があるのではなく、歩む道に価値があるという考えです

(東商新聞2017年6月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm