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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.7

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


かの資本家と労働者の間は、
従来家族的の関係をもって成立し来(きた)ったものであった

【論語と算盤】:ただ王道あるのみ より

 
予算や営業目標など会社の要請に応えなければならない。
業績や株価など投資家の要望に応えなければならない。
このようなギクシャクとした日常の中、安い給料で、あくせくと働かされている。
こんな感情が世の中では少なくありません。  

また資本主義は格差を生む社会の悪徳という偏見が世の中で広まっています。
資本主義の主役である「資本家」の定義とは、広辞苑によると「資本を使用し、労働者を使役する人」です。人情のひとかけらも感じられません。

しかし、我が国において、本来の資本主義の姿とは、こんなものではなかったと思います。

渋沢栄一が資本主義を日本へ導入することを推進した理由は、社会の一部上層部の利益のためではありません。
一事業の繁栄のためでもありません。
民により民のために国力を高める国富のためでした。

立場が異なることは確かです。
ただ、資本家・労働者ともに一人ひとりでは微力な存在です。
共に助け合うことにより、勢力となり、未来へ流れる「大河」を共に創ることができるのです。


今日よりも、よい明日への「共感」により集まり、「共助」により互いが不足なところを補い、持続的に価値を「共創」する。
これこそが、我々が取り戻すべき本来の資本主義の姿です。

(東商新聞2016年11月20日号 掲載)

 

いずれの国家においても、
自国の商工業を発達せしめんとするには、
海外に我が国産の販路を求め、
人口の増殖するにおいては
領土を拡むること構ずるのみならず
様々なる戦略をもって自己の勢力の増大を図るのである。

【論語と算盤】:文明人の貪戻(どんれい) より


トランプ現象。ブレクジット(英EU離脱)。
最近、グローバル社会への反乱が目立ちます。

国と国との間という国境ではなく、都市部に暮らしている人々の世界観とその他地域に暮らしている人々の価値観が、同じ国内でも、隔離しているという現実を生々しく教えてくれました。

精鋭論客の経営共創基盤CEOの冨山和彦さんもグローバリズム(G)に振れていた振り子が、ローカリズム(L)へと振れていると指摘しています。

しかしながら、インターネットとは、Gの経済の人々だけではなく、Lの経済の人々も恩恵を受けることができます。
今までの「グローバリゼーション型」から、グローバルとローカルが組み合う「グローカリゼーション型」へとシフトしていくと冨山さんは予測します。

確かに、「論語“と”算盤」が、「か」の力ではなく、「と」の力を唱えているように、我々が目指すべき社会は「GかL」ではなく、「GとL」だと思います。
これが、渋沢栄一が必要性を訴える「様々なる戦略」ではないでしょうか。

量や力の論理のハードパワーだけではなく、質の向上により魅力を発揮するソフトパワーをもって「自己の勢力の増大を図る」時代の到来です。

(東商新聞2016年12月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm