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【特別インタビュー】吉沢 亮さん(俳優・大河ドラマ『青天を衝け』主人公 渋沢栄一役)

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大河ドラマ第60作目となる『青天を衝け』(2月14日から放送開始予定)の主人公は、2024年から新1万円札の顔となる渋沢栄一翁です。約500の企業を育て、約600の社会公共事業や民間外交に関わるなど、日本の近代化に尽力した “日本資本主義の父”。東商の初代会頭でもあります。
主役の渋沢栄一を務めるのは、連続テレビ小説『なつぞら』(NHK)の“天陽くん”としてお茶の間の話題をさらった人気俳優、吉沢亮さんです。撮影の合間にお話を伺いました。

よしざわ・りょう

1994年生。東京都出身。「アミューズ全国オーディション 2009 THE PUSH!マン ~あなたの周りのイケてる子募集~」審査員特別賞受賞。11年、ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』でメテオ/朔田流星役を演じて注目を集め、以降数々のドラマ、映画、舞台で活躍。最近の主な出演作品として、映画は17・18年『銀魂』シリーズ、18年『リバーズ・エッジ』、19年『キングダム』、20年『青くて痛くて脆い』『AWAKE』。19年連続ドラマ小説『なつぞら』(NHK)出演。特技の剣道は二段の腕前。


大河ドラマの主役をやらせていただくということは、役者人生では特別なものです。渋沢栄一役としてお声がけいただいたときは、とてつもない喜びであると同時に、僕でいいのかという戸惑いや、尋常じゃないほどのプレッシャーもありました。

昨年の7月下旬にクランクインしてからは、とてつもないスケール感の中でお芝居をさせていただいています。安中市(群馬県)のオープンセットはとにかく広く、景色が素晴らしい、贅沢な空間です。ロケ地の真ん中に、霊気が漂うような大きな木が立っていて、7・8月のものすごく暑い時期でも、その周辺だけはとても涼しいのが印象的でした。

周りの役者さんも、役者としてはもちろん、人として尊敬する方ばかり。毎日ご一緒させていただき、自由な気持ちで取り組んでいます。皆さんとてもフレンドリーというか、常に自然体で現場にいらっしゃるので、いい意味で緊張せずに過ごせています。撮影後にご飯に行ったりはできませんが、現場では楽しくご一緒させていただいています。

大河の主役は“座長”と呼ばれたりするようですが、周りの皆さんが素晴らしすぎて、「僕が引っ張っていこう」みたいな気負いはあまりないというか、自分のことで必死な状況です。とりあえず、差し入れはいろいろ入れるようにしています(笑)。

──演じる際に心がけていることは?

渋沢栄一は、波瀾万丈というか、いろいろな人生を歩む方です。もとは豪農の長男として生まれ育ち、家業の藍玉づくりと養蚕を手伝いながら、学問も習得します。高い志を持ち、尊王攘夷に惹かれて志士を目指していたかと思ったら、幕府側につくことになり、転々とします。折々に、彼は自分で決断してひとつひとつ前に進んでいきます。周りに流されたり、世の中の流れに合わせたりという部分も多少はあるかもしれませんが、最終的に何を選ぶかは、そのたびごとに自分自身で決めている。その決断の瞬間みたいなものは、芯をもって演じたいと考えています。

それから、渋沢さんは若い頃、村一番の力持ちだったそうで、青年期を演じるにあたり、役作りとして体を大きくしようと努めています。食事では、炭水化物を多めに摂り、タンパク質もしっかり摂って。とにかく量を食べるよう心掛けています。

難しいのは、そろばんのシーンです。今までそろばんなんて一切やったことがなかったので、毎回先生に教わりながら、計算に合わせてそろばんをはじかせていただいていますが、ちょっと手強いなと感じています。

渋沢栄一のチャーミングさと生命力

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──吉沢さんが思う渋沢栄一の生き方とは。

「利益を生むことはもちろん大事だけれど、全体を考えた上での利益でなくてはならず、私欲であってはいけない」。実は彼の考え方は、幼い頃から大人になってもずっと一貫していて、芯にある信念みたいなものは何も変わっていないように感じます。それはとてもクールだし、演じていても学ぶことだらけです。そういう意味ではずっと“世界”を見ている方なんだなと。最初は農民として村のことを考えている。成長とともに、フィールドが広がっていくだけなんです。

彼の、相手によって態度を変えないところ、たとえ権力者相手でも理不尽には立ち向かう姿は毅然としてかっこいい。僕自身、誰に対しても、人として誠実に向き合える人間でありたいと思っているので、そういう部分でも渋沢さんから学ぶことはたくさんあります。

また、頑固なところはあるけれど、「この人が言うことは正しい。自分が間違っている」と気付いた瞬間に、すぐに転換できる柔軟さを兼ね備えた方です。非常にエネルギッシュであると同時にスマートで魅力的です。

ドラマの中の渋沢栄一は、表裏のない人物で、自分に対しての感情や、周りに対して思うことを、素直に出してしまう男。僕はここまで表裏のない役をやったことがなく、はじめは戸惑いや不安がありましたが、やっているとどんどん気持ちよく、楽しくなってきました。非常にチャーミングで素敵な方だと思います。そういう人としての魅力に加えて、一歩間違えば死んでしまうような事件も数々巻き起こるので、それを生き抜いていく生命力みたいなものを表現していきたいです。

『青天を衝け』のみどころ

誰もが知っている歴史上のヒーローの人生を描く大河ドラマは数多くあります。お馴染みの人だからこそ、次のタイミングであの名シーンが来るとか、最期はどのように描かれるだろうとか、そういう部分に視聴者の皆さんは注目されていると思います。一方、今回の渋沢栄一は実業家としての実績は非常に知られていても、その生い立ちを細かくご存じの方は案外少ないのではないでしょうか。「新1万円札の顔の人物」としか知らないという方も少なくありません。その意味で今回は、ちょっと新鮮な気分で楽しめる大河ドラマになればいいなと思っています。

ドラマでは、渋沢栄一の故郷 血洗島村(現在の埼玉県深谷市)のパートと、江戸幕府第十五代将軍・徳川慶喜公が登場する水戸・江戸のパート、2つの物語が、話が展開するにつれてどう絡みあっていくのかは僕自身とても楽しみだし、みどころのひとつです。脚本の大森美香先生の、心に残る言葉の数々も、演じていても素晴らしいと感じます。ぜひご注目ください。

経営者の皆さんの多くは、すでに渋沢さんの仕事をする上での信念を、よくご存じだと思います。その信念や教えの成り立ちや、支える想いなどが、『青天を衝け』の中にちりばめられているのではないでしょうか。若い頃はこういう生活をしていたとか、こんな挫折があったとか、ドラマを通じて感じていただけるものはたくさんあるかと思います。ぜひご覧いただければうれしいです。

大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)

 2月14日(日)放送開始(予定)

 日曜【総合】午後8時  【BSプレミアム】【BS4K】午後6時

(再放送)
 土曜【総合】午後1時5分


※本インタビューは、東商新聞1月20日号「Biz Extra(1面)[FACE]」に掲載されています。
紙面でもぜひご覧ください!

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

東商新聞デジタル版|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/newspaper/