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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.5

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


現在有るものを無いといい、無いものを有るというがごとき、
純然たる嘘を吐くのは断じてよろしくない、
ゆえに正直正銘の商売には、
機密というようなことは、まず無いものと見てよろしかろう

【論語と算盤】:合理的の経営 より

 
渋沢栄一は会社重役として経営力が欠けている3つのパターンを指摘しています。

①会社の取締役や監査役など肩書きを求める「虚栄的重役」。
しかし、彼らの希望は小さいだけに、それほどの損害の心配はありません。

②好人物だけれども、「事業経営の手腕がない」重役。
部下の善悪の識別や会計処理を精査する能力がなく、知らず知らずと自分自身が苦しい立場へ追い込みます。
前者と比べてやや罪が重いですが、故意に悪事をなした者ではありません。

③会社を利用して「自己の栄達を計る踏台にしようとする」重役。
例えば、株価を上げて置くために、実際ない利益を有るように見せかけることは明らかに詐欺の行為であると栄一は痛烈に批判しています。

歴史ある大企業の不正事件が相次いでいます。
「自己のためではなく会社のため」という弁解があるでしょうが、会社における自分の立場を維持するために正直正銘の商売への意識が欠落したことが本意でしょう。

(東商新聞2016年5月20日号 掲載)

 

趣味を持って事物を処するというのは、
我が心から持ち出して、
この仕事はかくして見たい、こうやって見たい、
こうなったから、これをこうやったならば、
かくなるであろうというように、
いろいろの理想欲望をそこに加えてやっていく

【論語と算盤】:この熱誠(せい)を要す より

 

仕事中に趣味のことを考えているようでは給料泥棒のような感じがします。
しかし、ここで渋沢栄一が薦めている趣味とは「ホビー」のことではなく、「物事の味わいを感じ取る能力」という側面です

趣味がなくて、ただただ機械的に「お極(き)まり通りの仕事に従うのであったら、生命の存在したものでなくて、ただ形の存(そん)したものとなる」ことに栄一は問題視しています。

終身雇用・年功序列が常識と思われた時代では、組織や上司から降りてくる仕事に従うだけで良かったかもしれません。
背景には日本の経済社会の高度成長があって、指示待ちの姿勢でも事が進んだのです。

ただ、「趣味」がない役職員の会社が現在のグローバル社会で生き残れるはずがありません。
与えられた仕事を処理するだけの姿勢では会社で起こっている不正も闇に隠れたままになってしまいます。

仕事に理想と欲望を掲げる「趣味」を持つことは、結果的に会社と本人の成長へとつながります。

(東商新聞2016年6月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm