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【テレワークにおける労務管理とマネジメント】第2回「労務管理の課題と他企業の取り組み事例」

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今回の新型コロナウイルス感染症対策として、これまでにない規模でテレワークが実施されることとなりました。
テレワークの際の労働時間管理のあり方や社内コミュニケーションの不足への対応など、様々な検討課題も見えてきているところで、企業・働く人・行政ともにニューノーマル(新常態)を模索している中です。

今後のテレワークにおける労務ルールについては動向を注視していく必要がありますが、本連載ではおさえておきたい現状のテレワークにおける法的なルールと、テレワークにおける課題、他企業の取り組み事例などをご紹介します。

今回は、「労務管理の課題と他企業の取り組み事例」についてまとめました。
内容は、以下の資料を参考に修正加筆したものとなります。

※参考資料※
これからのテレワークでの働き方に関する検討会(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kintou_488802_00001.html

 

 

①テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人事評価)

非対面の働き方は、労働者個々人の業務遂行状況を把握しにくく評価者に見えづらく、業務への取り組み姿勢等を含めた評価が困難になるなどの声があがっています。

第1回の記事  で記載したガイドライン(「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン  」)によると

「評価制度など明確にすることが望ましい~省略~労働者の勤務状況が見えないことのみを理由に不当な評価を行わないよう注意喚起することが望ましい」

とあり、テレワークにあった評価方法はとくに示されてはいません

やはり企業によって業務や性質はまちまちなため行政から具体的なガイドラインを示すのは難しいのでしょう。

<他企業の考えや取り組み例>
  • テレワークでは業務成果が見えやすくなるため、業務遂行の効率の高さや低さは出勤時より明らかになりやすい
  • テレワーク時では、業務の業務遂行のプロセスが見えないため、成果で判断するしかなく、マネージャーの評価訓練が必要と感じている
  • 働きぶりを見える化する必要があると考え、業務のToDoを書き出すようにしている
  • 四半期で数値目標、行動評価を設定し、毎月の面談を実施。この結果をもとに半期に一度評価を実施し賃金に反映している

②テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(費用負担) 

自宅で業務遂行するために、机や椅子、パソコンの準備、光熱費や通信費が発生しますが、これを会社と従業員どちらがどのように負担するのか検討する必要があります。
企業側がテレワーク手当を支給しているケースもありますが、特段支給していない場合もあります。
サテライトオフィスやコワーキングスペースでテレワークを実施する場合の移動にかかる交通費や利用料は会社と従業員どちらが負担とするかも検討する必要があります。

先述したガイドラインによると、

「テレワークに要する通信費、情報通信機器等の費用負担、サテライトオフィスの利用に要する費用、専らテレワークを行い事業場への出勤を要しないとされている労働者が事業場へ出勤する際の交通費等、テレワークを行うことによって生じる費用については、通常の勤務と異なり、テレワークを行う労働者がその負担を負うことがあり得ることから、労使のどちらが負担するか、また、使用者が負担する場合における限度額、労働者が請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望ましい
特に、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならない」

とあります。


<他企業の取り組み例:テレワーク手当・リモートワーク手当の状況>

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(出典:厚生労働省資料や報道などによる)

 

<その他企業の例>

  • パソコンやWi-Fiルーターの貸与や、椅子や机などの環境整備の一環で全員一律3万円支給した
  • 通勤定期代の支給をやめ、在宅勤務手当を支給している

など様々です。

③テレワークの際の労働時間管理の在り方について

■テレワークの際の労働時間把握方法や業務中の「中抜け(業務から離れる時間)」や「途中の休憩」についての取り扱い、テレワーク中の長時間労働対策について

中抜け時間については、使用者の業務指示がなく、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている時間の場合は、

  • その開始と終了の時間を報告させる等により、休憩時間として扱う
  • 労働者のニーズに応じ、始業時刻を繰り上げる、又は終業時刻を繰り下げる
  • 休憩時間ではなく時間単位の年次有給休暇として取り扱う

ことが可能となります。

なお、始業や終業の時刻の変更が行われることがある場合には、その旨を就業規則に記載しておかなければならないとされており、また、時間単位の年次有給休暇を与える場合には、労使協定の締結が必要です。

移動時間中にパソコンなどの情報通信機器を使い業務を行う場合、その時間帯が労働時間か否かについては、「使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われるものについては労働時間に該当する」と示されており、個別具体的に判断されることになります。

<他企業の取り組み例>

  • オンライン会議で、テレワークの開始とその日やることの報告、終了の報告を実施している
  • フレックスタイム制を導入しているが、コアタイムを全廃した
  • スケジュール、業務内容、業務進捗を共有している
  • 残業となる場合は上司に報告した上で時間外労働を認めている
  • 始業・終業のメールを上司に送付し、上司はそのメールをもとに勤務時間が適正かどうかを確認している
  • 勤怠管理は、昼休憩や中抜けも含めて打刻することにしており、打刻漏れがあった場合や業務終了時の業務報告も義務としており、これらができない者はテレワークに適さない者としてテレワーク対象者から外している

④テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて

パソコンや照明、換気などの執務環境については、管理が難しいのが現状ですし、自宅で上司や同僚とコミュニケーションがとりづらく不安を感じる方もおり、メンタル面での不調に留意する必要もあります。

先述したガイドラインでは、

「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の留意:テレワークを行う作業場が、自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン  の衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましい」

とあります。

<他企業の取り組み例> 

  • 出社せずに毎日在宅勤務とした場合、ロイヤルティ(自社への愛社精神や忠誠心、帰属意識、組織コミットメントなど)の低下やメンタル不調等の懸念があるため、最低出社日数ルールを設定したうえで、テレワークを推進していく
  • 5月末くらいから2週間か3週間おきに全社的にアンケートを実施しており、アンケートの結果を受けて健康経営を考えているチームがストレスマネジメント(ストレスに対処し、上手に付き合っていくための方法など)に向けて動き始めている

テレワークはコロナなどの感染対策のためだけではありませんので、まずは御社でテレワークを推進していくことの目的をしっかり決め、その上でテレワーク実施頻度、手当支給有無・手当の額などを検討し決めていく必要があります。
他企業の動向も把握している社会保険労務士と協働しながら進めていかれるのもよいでしょう。

 

米澤
【執筆者プロフィール】
米澤 裕美

米澤社労士事務所 代表 特定社会保険労務士
一般社団法人日本テレワーク協会専門相談員

ネットワーク機器メーカーの内勤営業として長年勤務後、社会保険労務士法人勤務をへて開業。ネットワーク機器メーカー在職中は、統括リーダーとして採用や教育にも注力。社内の情報や想いの共有が重要だと考え、全国支店共通で閲覧できる社内ポータルサイトを立ち上げ、抜本的な業務改善を実現。大切にしていることは人の想い