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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.3

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


目的を達するにおいて手段を選ばずなど、
成功という意義を誤解している。

【論語と算盤】:人格と修養 権成ある人格養成法 より

 
「企業は高収益を上げ続けることだけを考えて、社会的な貢献は税金で納めれば、それで良い」。
経営者から、このような声が聞こえてくることが少なくありません。
つまり、経営の行動指針とは、「儲かってナンボ」と考えているようです。  

しかし、収益を達成することだけが成功の意義としているようでは、栄一が指摘するように経営者の成功の意義に誤解があるのではないでしょうか。
最近では、日本やドイツを代表するような大企業が収益拡大という成功に目が眩んで不祥事を起こしたことが世界を騒がしています。

確かに、企業が収益を上げ続けることは経営者の重要な責任です。
ただ、納税は決して社会への「貢献」ではなく、法的に定められた「義務」です。
また、企業が収益を上げられる社会を維持するための「費用」です。

一方、経営者の真の責任とは、「幸せ」を実現させることと言えると思います。
それは、社会の幸せ、顧客の幸せ、従業員の幸せ、取引先の幸せ、株主の幸せ、そして、もちろん自分自身と家族の幸せです。
これが経営の本質であり、手段をきちんと選んだ正当な成功の意義ではないでしょうか。

(東商新聞2015年11月20日号 掲載)

 

およそ人の禍は多くは得意時代に萌(きざ)すもので、
得意の時は誰しも調子に乗るという傾向があるから、
禍害はこの欠陥に喰い入るのである。

【論語と算盤】:処世と信条 得意時代と失意時代 より

 

過ぎてしまった時間は取り戻せません。
人生のやり直しができないことは理解しています。
しかしながら、過去を振り返ったときに調子に乗っていた状態での判断が、その後に裏目に出たという経験は誰でも抱えていると思います。  

けれども、過去の自分の判断を現在の自分が置かれている状況のせいにしている側面もあるかもしれません。
過去は変えられませんが、これからは変えることができるはずです。  

「得意時代だからとて気を緩さず、失意の時だからとて落胆せず情操をもって道理を踏み通すように、心掛けて出ることが肝要である」と栄一は指摘します。
やるべきことを、きちんとやるという心掛けがあれば、いずれ未来が開けてくるという心強いメッセージです。  

ただ、「やるべきこと」は自分だけでは把握できない場合が多く、他者の視点が必要です。
また、「きちんとやる」ということは、「がんばります」という表層的な言葉だけではなく、タイムリーに実践する意識と行動です。  

「がんばっているのに、なにも成果がない」という谷から這い上がるためには、考えすぎず、道理を踏んで動くべきではないでしょうか。
下を向いていたら、上へ進めません。

(東商新聞2015年12月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm