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働き方の新しいスタイルにおける「こころの健康」を保つコツ 第3回【在宅勤務での部下の体調把握と、体調不良者の早期対応のポイント】

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ー産業医から元気に働くためのアドバイスー

現在、新型コロナウイルス感染対策の中で、新しい働き方における健康を保つための工夫がよりいっそう大切になってきています。
そこで、東京商工会議所では、計7回にわたって、働き方の新しいスタイルにおける「こころの健康」を保つコツについてご紹介していきます。

※本記事は、日頃から人事・総務担当者や管理職、労働者からの様々な相談に対応されているヘルスデザイン株式会社の坂本先生(産業医・労働衛生コンサルタント)に執筆にご協力いただいています。


急速に進んだ在宅勤務の中で、管理職の方々から、「在宅勤務中の部下の状況が把握しづらいため、部下の健康が心配だ」といった相談が増えてきています。
今回は、管理職が在宅勤務中の部下の体調を確認し、体調不良者に早期対応をしていくためのポイントを一緒に見ていきましょう。

1. 在宅勤務での、「ラインによるケア」の3つのポイント

管理職が部下の体調を確認し、体調不良者には早期に対応することは、ラインによるケア(ラインケア)と呼ばれ、管理職の大切な役割です。
ラインによるケアには3つのポイントがあります。

ポイント1 いつもの部下の様子と違うことに気づく

「あれっ、普段となんか違うな、おかしいな」と感じることが、部下の体調不良の早期発見につながります。
もちろん、普段の部下の様子を知っておくことが前提となりますが、在宅勤務下ではもう一工夫が必要になります。

(A)勤怠状況はどうか?

今までは、実際の在席状態を見れば、部下の勤怠(遅刻や欠勤など)は把握しやすい状況でした。
在宅勤務下では、今まで以上に勤怠管理データやパソコンのログイン情報を確認して、遅刻や無断欠勤がないか、残業時間が増えていないか、在宅勤務時の離席時間が長過ぎないか等に注目します。

(B)部下の様子はどうか?

対面で直接、顔を見ることができないため、オンライン朝礼などの機会を定期的に作って、カメラをオンにしてもらって、表情が乏しくないか、言動が不自然ではないか、衣服が乱れていないか、不潔感がないか等を確認します。

(C)業務はできているか?

普段と比べて、業務の能率や結果を出すのが遅れていないでしょうか。業務の報告・連絡・相談(報連相)が減っていないでしょうか。
健康状態が崩れてくると、報連相のタイミングが滞ってきますので要注意です。


管理職の方々に部下の健康状態について医学的診断を求めているわけではありません。まずは、普段の様子と違っていないか?に気づくことが、部下の健康を守ることにつながっていきます。

ポイント2 部下に声をかける

オンラインでの全体会合以外にも、1対1の個人面談の機会を増やしましょう。
短い時間でもよいので(10分程度でも)、面談の機会を多く設けていきます。
次のような質問で、部下の健康状態を把握してみてください。

  例:「最近、睡眠は取れている?」
    「食事は摂れている?」
    「休みの日はゆっくりできている?」
    「体調は大丈夫?」
    「何か困っていることはない?」

ただし、部下は調子が悪い状態でも、上司には「大丈夫です・・」と偽って返答することがあります。
管理職として、いつもとは違った様子を感じる場合は、時間を置いて上記の質問を繰り返すとともに、「今後何か困ったことがあれば、相談してね」という上司としてのメッセージも伝えておきましょう。

ポイント3 話を聞く(傾聴する)

管理職として部下から相談を受けることがあれば、まずは部下の相談に耳を傾けることに注力しましょう。
管理職として、ついつい部下に助言をしたくなるかもしれませんが、ここはグっと我慢です。
まずは相手の思いや考えていることを聞くことに徹して、部下の思いを受け止め、相手の立場になって感じてあげてください(これは「傾聴」と呼ばれます)。

2. ラインケアを進める上での注意点

管理職がラインケアを進めていく中で、部下の調子が悪くてどう対応すればよいかわからない場合や、部下に管理職が振り回されるような場合には、管理職も自分の上司や人事・総務部門に早めに相談しましょう。

会社で契約している産業医や保健師などがいれば、相談することは有用です。
くれぐれも、管理職が体調不良者の対応を抱え込み過ぎないことが大切です。
そして、部下の体調が心配であれば、医療機関を受診させることも検討してください。

本人が医療機関への受診を渋っていたとしても、「なんでもなければその方が良いのだから、念のために受診相談してみてはどうか」と部下を優しく誘導してあげてください。
また、下記のような社外の相談窓口もありますので、活用してください。

・健康保険組合の相談窓口

・会社で加入している保険会社の相談窓口(各社の契約状況による)

・産業保健総合支援センター

・精神保健福祉センター

・日本産業カウンセラー協会 働く人の悩みホットライン
 https://www.counselor.or.jp/consultation/tabid/298/Default.aspx

・いのちの電話 みんなのインターネット相談
 https://www.inochinodenwa-net.jp

私自身も産業医として、会社の人事担当者からメールや電話等で、「体調不良の社員がいるのだが、どうしたらよいか?」といった相談を受ける機会が少なくありません。
今後、ますます在宅勤務が増えてくることが予想されますので、管理職には今回ご紹介したような「ラインケア」を普段から行い、管理職も抱え込まないように社員の健康について社内で人事等と連携し、いざという時の連携先も見つけておくと良いと思います。


以上、管理職による部下への対応(ラインケア)についてご紹介しました。
次回(第4回)は、ラインケアの具体的事例をさらにご紹介して、在宅勤務で働く皆さんが自分自身で気をつけてほしいこと(セルフケア)について、ご紹介します。


<参考文献>
 厚生労働省 こころの耳
 https://kokoro.mhlw.go.jp/linecare/data/e-learning.pdf

 

坂本 宣明
【執筆者プロフィール】
坂本 宣明

産業医科大学を卒業し、臨床医の経験と専属産業医(製造業)の経験を生かして、より多くの中小企業で働く方々の健康を支援するために、様々な業種や規模の嘱託産業医として活動している。
活動内容は産業医業務に加えて、小規模企業でも健診結果の確認や教育セミナーを開催し、健康管理を行っている。専門は中小企業での健康支援と産業保健マーケティング。

日本産業衛生学会評議員、日本産業ストレス学会理事、さんぽ会幹事。
資格:産業医(指導医)、公衆衛生学修士、博士(医学)、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、健康経営エキスパートアドバイザー

<この記事に関連するサイト>
健康経営倶楽部|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/