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【労使トラブルQ&A】退職時の年次有給休暇

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様々な労使トラブルを防ぐ方法などについて、Q&A形式で紹介する本連載。今回は、退職時の年次有給休暇(以下、年休)について取り上げます。

f:id:tosho-antenna:20200623101129p:plain従業員が退職時に未消化の年休をまとめて申請してきました。
拒否することはできますか?

f:id:tosho-antenna:20200622134010p:plain退職時であっても、従業員の年休の申請は拒否できません。

年休取得に会社の許可は不要

従業員が年休取得を申請する場合、会社の許可を得る必要はありません。
年休は、法律で定める要件を満たせば発生します。
また、従業員による年休取得は「◯月◯日に取得します」などと指定すれば、取得できるものとされています。

年休取得の拒否

それでは、従業員から年休取得の申請があった場合、会社は絶対に拒否できないのでしょうか。

法律では、会社が年休取得日を変更できる「時季変更権」を認めています。
ただし、同権利を行使できるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限ります。
単に「繁忙期だから」「退職の引き継ぎがあるから」という理由では変更できません。

「事業の正常な運営を妨げる場合」に相当するか否かの判断は、事業の規模・内容、担当業務の内容、業務の繁閑、代替労働者の配置の難易などを総合して考慮するものとされており、非常に限定的です。

判例では、従業員による「長期かつ連続」の年休申請について、会社と従業員との間に「事前の調整」がなかった場合には、会社が年休取得日を他の時季に変更できる余地はあるとされています。

未消化の年休の買い取り

一方で、現実的には退職時の年休申請を全て受け入れることは難しい場合もあります。
労働契約上の義務があるため、会社は退職日までは業務を指示することもできます。  

その結果、従業員の年休取得を行使する権利と、会社の業務命令が相反します。
この場合は、業務引き継ぎを理由とし、可能なかぎり出勤させ、退職日までに消化しきれなかった年休を買い取ることを提案するのも方法の1つです。

日数に応じた手当ての支給

一般的に年休は買い取ることを約束した上で、付与日数を減らしたり、与えないということはできません。
しかし、退職や時効で年休の権利が消滅し、結果的に未消化となる日数に応じて手当を支給することは可能です。
また、その手当を給与ではなく、退職金の位置付けとして支給すれば社会保険料の対象にはならず、給与所得にはなりません。  

<参考>退職時の年次有給休暇の規定例と留意事項

規定例
規定例 第〇条 退職時の年次有給休暇の買い取り

1.会社は原則として年次有給休暇の買い取りは行わない。ただし、従業員が退職する場合、退職日までに消化できなかった日数を、◯日を限度に買い取ることがある。

2.前項の買取金額は次の計算式によることとする。
基本給÷1カ月平均所定労働日数×◯%

留意事項
  • 会社の時季変更権は非常に限定的な場合に限られる。
  • 従業員による退職時の年休の申請は拒否できない。
  • 未消化の年休は退職時に買い取ることを検討する。
  • 未消化とならないように、従業員に対し普段から年休の計画的な取得促進を図る。
【執筆者プロフィール】
高澤 舞

ドリームサポート社会保険労務士法人
同法人は千代田区と国分寺市の2拠点で事業展開し、上場企業を含む約300社の企業の労務管理顧問をしている。

 

<この記事に関連するサイト>

東商新聞 2020年7月20日号(7面に掲載)
 https://www.tokyo-cci.or.jp/newspaper/page200720/
東商新聞 デジタル版(最新号・バックナンバー)
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