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【連載】渋沢栄一の言葉~著書から読み解く“不変の「王道」” Vol.2

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東京商工会議所の初代会頭であり、500を超える企業の設立に関わった渋沢栄一は、実に多くの言葉を残してきました。現代の経営においてもその言葉は力を持ち、不変の王道として、たゆまなくその意志をつなぐことが求められているのではないでしょうか。
このコーナーでは、東商新聞  で連載中の「渋沢栄一の言葉」を、順次紹介していきます。


完(まった)き人は、智情意の三者が円満に具足した者、
すなわち常識の人間である

【論語と算盤】:常識と習慣 偉き人と完き人 より


「そんなことも知らないのか。常識がないな」。
我々が思う常識の通常の物差しとは智識や智恵のレベル感です。
ただ、渋沢栄一は、智識や智恵を満たすだけでは常識の人間にはならないと指摘しています。

智を使う人が常識であり、そのためには他への情愛、あるいは自らの情熱が必要です。
ただ、情に溢れるだけでは流されやすい傾向があります。

だから、しっかりと足を地につける意志が必要です。
ただ、意志だけが強ければ頑固になってしまいます。

智・情・意のそれぞれのレベル感だけではなく、この三つのバランス感を保ちながら、常に向上することに務める。
これが、渋沢栄一が考えた常識の人間である完きな人です。

一般的に、リーダーは偉い人というイメージがあります。
しかし、渋沢栄一がいう偉い人とは、智・情・意のいずれが尖がっていることです。
どちらかというと職人や専門職かもしれません。
真のリーダーとは自分の組織、あるいは社会全体に新しい常識を導きながら、持続的に前進させる完きな人ではないでしょうか。

終戦70年を迎える時代の節目に、新しい常識が求められている日本。
その新しい常識をつくるリーダーシップとは、私たち一人ひとりがそれぞれの立場において智・情・意のバランス感覚がある向上心です。

(東商新聞2015年8月20日号 掲載)

 

我々は今日ただいま、心酔の時代と袂別せなばならぬ、
模範の時代から去って、自発自得の域に入らねばならぬ。

【論語と算盤】:『実業と士道 模範時代に別れよ』より

 

本物、本質とは何か。
うわべでコトやモノの価値を判断するのではなく。

渋沢栄一は外来品に目を奪われる傾向がある当時の日本人に警告を鳴らしましたが、長い年月を経ても、このメッセージは現在でも通じます。
コンプライアンス、ガバナンス、ROE。
近年において日本人がよく耳にする外来語であり、これらのガイドラインに従事することによってグローバル社会への仲間入りできるというきらいがあります。

しかし、他が定めたルールに行儀よく従事していることが本質なのでしょうか。
ルールさえ従えば、本物をつくることができるのでしょうか。

否、ルールは世の中で欠かせない存在ですが、ルールに従事するだけが行動の指針となれば、それは思考停止へとつながります。
思考が停止すれば、自発自得は有りえません。

つまり、コンプライアンス、ガバナンス、ROEとは定められた水準を満たせば、それで良いという話ではない。
これらの本質とは企業の信用力を高める不可欠な手段であることで、目的ではないのです。
また、これらに単純な答えがある訳がなく、常に自発自得で求め続けなければなりません。

これが本物か、何が本質か。
本物に触れる、本質をつかむ。
自発自得に不可欠な前提は問いと行いです。

(東商新聞2015年9月20日号 掲載)

<この記事に関連するサイト>
渋沢栄一 特設サイト|東京商工会議所
https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/

 

渋澤 健(しぶさわ けん)
【執筆者プロフィール】
渋澤 健(しぶさわ けん)

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役
コモンズ投信株式会社取締役会長

<略歴>
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。経済同友会幹事およびアフリカ開発支援戦略PT副委員長、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部顧問、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。

シブサワ・アンド・カンパニー
http://www.shibusawa-co.jp/index.htm