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【労使トラブルQ&A】従業員の就業禁止について

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様々な労使トラブルを防ぐ方法などについて、Q&A形式で紹介する本連載。
今回は、季節性インフルエンザ(以下、インフル)に罹患した従業員への対応を取り上げます。

f:id:tosho-antenna:20200623101129p:plainインフルに罹患した従業員から、「出社したい」との申し出がありました。
本人の健康状態や周りの従業員への影響を考えて、どのような対応をすれば良いですか?

f:id:tosho-antenna:20200622134010p:plain心身の健康状態から従業員が十分に働けない場合、企業は従業員の労務提供を拒否することが可能です。
トラブルに発展しないよう、就業規則で従業員の就業に関する禁止規定を定めましょう。

法規制により従業員の就業が禁止される疾病

① 労働安全衛生法

「労働安全衛生法」(以下、安衛法)では、従業員が結核など病毒伝ぱの恐れがある伝染性の疾病に罹患した場合、企業は従業員に対し、就業を禁止しなければならないと定めています。


② 感染症法

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、感染症法)では、指定されている感染症に罹患した場合、都道府県知事が就業に関する制限や入院の勧告を行うことができると定めています。
都道府県知事による就業制限がかかった際には、従業員はその指示に従わなければなりません。

以上の法律にインフルを当てはめた場合、インフルは安衛法や感染症法における法規制の対象外ということになります。
つまり、法令などに従って、従業員の就業を禁止する必要はありません。

 

労働契約の原則へ

しかし、企業で「働く」ということは、企業と従業員が労働契約を結ぶことを意味します。
従業員には「企業に労務提供をする義務」が生じるとともに、仕事を誠実に行うことも求められます。

インフルに罹患した従業員から出社したいとの申し出があった場合、十分なパフォーマンスを発揮できないことは明らかです。
そのような場合は、就業禁止を就業規則で定めて、従業員の労務提供を拒否することが可能です。

従業員の心身状態に配慮も

もっとも、規定さえすれば良いということではありません。
運用する際は、心身の健康状態に問題があるかどうかを慎重に判断しましょう。

併せて、年次有給休暇の取得促進など職場環境の整備も大切です。
それが結果として、本人だけではなく他の従業員に安心感を与えることにつながります。

<参考>就業規制の規定例とチェックリスト

規定例
第〇条 就業禁止
 従業員が次の各号のいずれかに該当するとき、会社はその就業を禁止する。
1. 病毒伝ぱの恐れのある伝染性の疾病に罹患したとき
2. 感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律で定める感染症に罹患したとき
3. 従業員の心身の健康状態が就業に適していないと企業が判断したとき

チェックリスト

 法定外の場合も就業を禁止する規定を設けているか
 就業を禁止するか否かの判断は慎重に行なっているか
 年次有給休暇の取得促進など不測の事態に備えた職場環境を整備しているか

【執筆者プロフィール】
瓜阪 早貴

特定社会保険労務士・ドリームサポート社会保険労務士法人
同法人は千代田区と国分寺市の2拠点で事業展開し、上場企業を含む約300社の企業の労務管理顧問をしている。

 

<この記事に関連するサイト>

東商新聞 2020年4月20日号(7面に掲載)
https://www.tokyo-cci.or.jp/newspaper/file200420_5-8.pdf
東商新聞 デジタル版(最新号・バックナンバー)
https://www.tokyo-cci.or.jp/newspaper/